カフェ空堀ノスタ

長屋を改造したお洒落カフェ。
文明が滅んだ後の世界で暮らすSFなんかがある。
機械は作れる人がいなくなって、古いものが重宝され修理して使う。
そんな世界にオフィスビルから徒歩で辿り着く。
殺風景な白塗りのビルにグレーのオフィス机とパソコン。
そんな職場で働いているものだから、アジアン雑貨に癒される。
そんな空間が本当にあれば良いのだが、現実には借金で成り立っていた。
テレビでは脱サラしてはじめたラーメン屋が軌道に乗っても、
お茶汲みが脱OLして喫茶店をはじめたら、誰も給料を出せない。
俺は出していた。
現実的な台所事情を敢えて書く。
平社員とお茶汲みOLが初任給で22万ずつもらっていたとして、
男が少し出世して、社内恋愛で女が寿退社したとする。
男は出世で昇級したとしても、男女合計の給与は減っている。
IT企業といえどペットボトルに麦茶を炊いて持ってくる生活だ。
これが、普通。
しかし空堀ノスタの場合は嫁というわけではなく、両方自立している。
男に頼って生きるのは嫌だという反面で、喫茶店の経営者は別にいる。
赤字の喫茶店を支えているのは商店街をつぶしたくない役所の税金。
割高で栄養の無い喫茶店の食事。
マンションとコンビニだけになるのが嫌で、通っていた俺は
大阪の待ち人からすると、よそもの
それでも、住めば都。
東京のIT求人が給料の倍額を提示していても、住み心地は悪くなかった。
毎日通っても、夕食を出しても、酒を出しても、
サラリーマン一人の給料からは
ウェイトレスとキッチンと会計と家賃と、
来ない客のための冷蔵庫の予備、
目立たない店の案内板代わりの2件目にかかるお費用。
そんなものには、到底届かなくて
空堀ノスタは女性誌の誌面に一瞬だけ華やかさを添えて
閉店した。
そんなに華のある話ではないんだ。