先頭の不思議

いつからか電車に乗る時に先頭の車両まで歩くようになっていました。
勝負事に対するゲンを担いだり、先頭だと空いていて座れたりする、
そんなことなんかが原因だったんじゃないかと思い出します。
ふと、あるときに先頭に乗ったのに、降りた後駅の改札を出るとき、
いつのまにやら先頭でなくなっていることに気付きました。
不思議。
いや、不思議なはずが無い。
考えれば分かるはず。
しかし、今までは感覚で分かっていても論理的説明はできていない。
言葉通りに思議したことなどない事柄でした。
先頭の車両が駅に着いた時電車はまだドアを閉めたまま進んでおり、
階段に近いのは8両電車の3両目や6両目で止まった時に行き過ぎる。
だから、先頭に乗っていたのに後ろに乗っていた人に抜かされる。
学生の頃はいつも遅刻ギリギリで階段に近いドアを選ぶのに必死でした。
いつから、先頭に乗るようになったんだろう。
ふと、スポーツ選手で金メダルを取るような栄光を手にした人も、
ひょっとすると3両目くらいの普通の人に何か出し抜かれているような、
1番の人に与えられるべき役得が渡されていないような連想をしました。
どこかで不思議なトリックで順番が入れ替わっているのではないか。
電車を降りる直前に3両目まで戻ってドアの前に立ちました。
少しの早足でエスカレータを上り、真っ先に改札を出る。
正面のガラスに後ろから人が来る姿が映っている。
誰も前にいない階段を早足で降りました。


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