畳屋筋クイーンズコートビル

俺がガールズバーに大金をつぎ込んでしまったのは特別な店があったから。


とりわけ女の子がかわいい、わけでもなく、料理もダメ、酒の値段は普通。カクテルは簡単なものだけレシピを紙に書いてあって女の子が読みながら作る。


ネタバレになるが(店はもう潰れたのでいいだろう)店のメニューにクソ高いシャンパンがある。それを注文すると、スタッフみんなダンスフロアに立って通信カラオケを鳴らして歌って踊るサービスがある。それも何かのコピーでなく曲を決めて替え歌を作ってダンスも練習して、酔っぱらっているのを差し引いてもレベルが高いなと思うものだった。最初は驚いたが気に入ったのでまた行って、噂が広がると誰かがシャンパンを注文するおこぼれを貰いに店の周りに客が集まった。3曲くらいしか手玉はないのだけれど、店が賑わったので宗右衛門町から人が集まってワイワイと騒いで飲んでいた。


店の女の子が引退して、スタッフが入れ替わって、やがて俺も行かなくなり、店の前を久々に通ったら違う店になっていた。試しに入ることはしなかった。昔勤めていた女の子に電話すると、ほとんどの子は出ないが、音楽関係の仕事にそれから転職出来たというメールをひとりの子が返してくれた。


色々の店があって、表立ったサービスと本業は違ったりするものだ。今はダンスが見たいならAKB48でも見たらいいじゃんと思う。そんでも目の前でってのは贅沢だ。もういくら使ったか覚えていない。店が閉まるまでずっと俺のボトルは派手な装飾付きで置いてくれていたらしい。六本木と宗右衛門町とどう違うのか俺は知らないが、京都祇園は歩いてみて、まだまだ狭いんじゃないかと思う。大阪難波も狭く感じていたが、誰が金を撒いたのか随分と線が太く長くなった。歩いていて飽きない。


街が賑やかになっているのを見て、それは人生経験の短い子供時分には分からないことだが、この先の人生を政治家のような立場でモノを見ることに対する理解はできる。シムシティをリアルにゆっくり時間をかけて遊んでいるんだ。