和田秀樹先生のが東京大学の授業に値打ちが無いとおっしゃっていたのには専門が精神医学だったからというのが理由にあるのかもしれませんね。つかみどころのない研究だと思います。工学部の畑村洋太郎先生の本は分かりやすくてためになりました。本の厚みのわりには得られたことが少ないと感じる面もありましたが、そのぶん緩い坂をゆっくり昇って行くような確実な足場が出来たと言うか。ドンガラ率を加味した機械の重さの推測などは今では自分の考え方の根幹を成しています。
畑村先生は本の中で計測ではなく予測でモノを計る時には実測値と比べて倍から半分くらいまでは正解と書いています。これは高校地学で星と星の距離を観測に基づいて計算したときに授業中に3倍ほど開きが出て大ブーイングが起こったのですが、理科の先生が「定規では計りようの無いもので自分が住んでいる地球と比べて遥かに大きいものに3倍という近い値が得られたんだからこれはとても良い数字なんだぞ」というような話でまとめられ、その時からじゃあ教科書に載っているような値が正しい値であると言う根拠はどのへんにあるんだろうかと不思議に思っていたこともあるのですが、東京大学の教授でも倍から半分のブレがあるんだとわかると、高校の実験での3倍と言うのはやっぱり誤差と言うには少し大きいけど、近い値まで来ていて、あとは精度なんだなと分かりました。このへんは中谷宇吉郎の「科学の方法」を併せて読むとさらにわかったことです。
ただし、倍から半分でも「惜しいですね、ほぼ正解です」となるのは畑村先生に東大教授と言うバリューがあるからで、小学校の理科の実験なんて0.1でもズレたら子供は納得しないものだと思うんですよ。俺はもう科学なんてその程度のモノだとなかば舐めてるし、そのせいで日増しに計算がザックリと大雑把になっていますが、工業技術の世界では精度は日に日に増しているはずなんですよ。学問と現場の違いですよね。若い先生で厳密な方向に努力している人のほうに期待がかかるように畑村先生が誘導しているのかもしれませんね。
- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/02/20
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