ソフト開発で発生する大量の中間データの価値が理解されない

タダでコピーできるソフトを開発するのに多額の投資を行い、ソフトに価格を付けて販売することで儲けを出し、開発費用以上の儲けを生み出す。矛盾しているようで巧妙な仕掛けだ。

これは種を植えれば生えてくる野菜を育てて実をひとつ取って売ることに似ている。種を植えたら木が生えて実がなくことは小学生でも知っているが、そのためには育てるための農地や気候などの条件がいる。気候条件は雨の代わりの水やりをはじめとして、人工的にある程度管理できる。ソフトウェアは生き物ではないので、作物のように条件が整えば育つというわけではないが、農家の方が毎日作物を世話するように、毎日パソコンに向かって少しずつ作業を続ける気の長い仕事であるところが似ている。

嘘だと思われるかもしれないが、ソフトウェアの開発には膨大な時間がかかる。それは開発をハードウェアと市販のOSから始めるのが一般的だからだ。資金調達をしてプログラマーと機材を大量に買って事業としてソフトウェアは開発される。そして大抵の場合は開発が終わると開発者は契約満了になって、また別の開発に招集される。

全く新しいソフトウェアで作りっきりの場合はそれでも理解できるが、農家の例えで言うと稲作のように1年周期のものと、果樹のように育てるほどに収穫が増える性質のものはその取り掛かりが全く違ってくるだろう。

こと、ゲームソフト開発はその開発過程で得られる中間データが実を取った後の果樹のようなものであり、次に類似品を作る時には資産として莫大な価値がある。

それがなかなか理解されない。集めて作って出来たら捨てる。もちろん、分かっている人もいて、ゲームソフトに詳しいなら、そのソフトの箱に印刷されているメーカーのロゴにお気に入りがあって、ファミ通を読むまでもなく好きなメーカーからゲームが出たら予約するというファンもいるだろう。

ゲーム業界には任天堂ソニーのようにハードをサプライする会社と、それで遊べるソフトを製造販売する会社があるが、例えばパソコンやケータイのビジネス向けソフトのようなものは銀行や政府主導で更地に人と開発機材を集めて作られる。そして大量の中間データはいつも捨てられている。俺はこれほど勿体無いことは無いと思っている。

システムエンジニアプログラマーとしての経験が増えてくると、段々と社会の重要なポジションの仕事の依頼が来る。俺はゲームプログラマーに憧れてプログラマーの職を勉強のためだと思ってしていただけなので、駅の定期券や銀行のATMなどのソフトウェアを任された時には「どうして俺なんかがこんな大役を任されるのだろう」とその責任の重さに精神的に追い詰められた。

しかし、それらの仕事は案外簡単なのである。ちゃっかりしているソフトハウスが以前に仕事を請け負った時の中間データが保管されていたのだ。その価値には気付いているが、それを理解していじくるリバースエンジニアリングの知識を持つ人がいない。

そこへ来て、中間データを読める俺の能力が刺さった。鉄道会社から莫大な予算が降りた定期券のシステムは磁気定期券のシステムをほぼそのままに、カードをIC定期券に変えただけで新駅のデータだけ改変すれば良かったのだ。そして会社は莫大な予算を何もせずにダラダラしている従業員にばら撒いて、それらを開発費用と計上することで利益は出さずに丸儲けたわけだ。ひどいところなんて、社長さんのお気に入りのスナックのママなんかもその時はスーツを着てデスクに座り従業員として働いていた。

しかし、それでも中間データというものの価値はまだまだ社会認知されていない。定期券やATMの仕事はひとりで何千人の仕事をするスーパープログラマーによって成されたという噂話だけが起こり、俺はその疑いをかけられて、大阪ガススマートメーターの開発に大抜擢されたわけだが、大阪ガスの本社に招かれても中間データを握っているのは過去に開発の経験があるどこかの下請けメーカーにあるか、もしくは捨てられたかだ。

だから、俺は大阪ガスの開発がポシャって解散になった時「噂のスーパープログラマーはこの人ではないな」というレッテルを貼られて、今も普通のプログラマーとして時々仕事を探している。

中間データに価値があるのがわかった俺は自分の家でゲームソフトを作ってみて、それが将棋ベーシックや麻雀ベーシック「大三元」なのであるが、家族も俺はパソコンでゲームをしているだけだと思っているし、世話になっている社長さんにもそれを作る時に出来た中間データを買ってもらえないか持ちかけたが「僕プログラムとかあんまり分からないから」と2万円で買ってくれただけだった。

そして3ヶ月不眠不休で作ったゲームをフリーウェアをして配布しているが、中間データは全て残っているので、いつか続きの仕事をして任天堂switchで麻雀ゲームを作って売れば儲かるかなと画策はしているが、セガがパソコン用の麻雀を無償化して、任天堂WiiUの麻雀を年間利用料100円で配布している。無料でもらえるとか100円で買えるもののために儲かるか儲からないか分からない事業に自分で投資して開発しようとしう気はなかなか起きない。

これが俺がウインドウズ用の製品はフリーで配布してもケータイ用の製品をリリースしていない理由でもある。

そして政府が人工知能に投資するといって、また更地に何かを作って捨てるバカな仕掛けが始まっているのではないだろうなと思っていたら、その一部を知り合いの社長さんが請け負っていると噂を聞いて、もしかしたら将来はその会社がラクに儲かるうまいことやっている中小企業になるかもしれないなと思った。

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