記憶の怒首領蜂

ゲーセンで怒首領蜂をクリアしたことがあるという記憶が本当であることを証明するには、今になってからクリアして写真をとってもそれは今になってクリアした証拠にしかならないから記憶の証明にはならない。しかし、なぜそのような行為に出たかと言うと、怒首領蜂をクリアしたと言ったら「もう一度やってみろ」と言われてそこで失敗して「嘘つきだ」と言われたからなんだよな。それは過去にクリアしてその時に失敗しただけであって、何度もトライすると成功したり失敗したりする性質のものを解ける解けないの2面しか無いと誤解した人間の言ったことなんだが、それは誤解しているわけでなくもっと他の企みがあるかもしれない。そこはまだ掘り下げない。
カメラやビデオに収めたわけではない以上、過去を証明するのは難しいが、大阪千日前の「モコ」というゲーセンの店長や店員に覚えている人はいないかと考えるようになった。確か、モコだったはずだ。しかしモコはその後閉店になっているし店長や店員さんの名前も知らない。また「嘘つきや」と言われたことに対しても、誰だったかハッキリしない。これはキューピー堂のおばちゃんの息子の口癖のようなもので、俺が何か自慢をするとよく「嘘だ」といって制されたものだ。そして中学の同級生からも「嘘つきだ」といじめられた。
学校にゲームボーイを持っていって、盗まれたことがある。俺はおそらくそいつだろうと思っている生徒がいて、先生に密告して持ち物検査をしてもらった。そうするとゲームボーイを持ってきている生徒は何人か居たが、画面についた傷などで自分が持っていたものと一致するものがなかった。恐らく盗んだ奴が持ち物検査の前に上級生に流したのだろうということが後からわかった。俺は上級生に目をつけられていた。
つるんでいたけど、本当に友達らしいことなどあっただろうかと振り返ると俺は友達だと思っていても向こうはそうは思っていないかも知れないし。それは自分の身に照らしてみると雑誌の投稿欄で格闘ゲームの強いやつの噂を聞きつけて電車で新宿まで行った時に目的の梅原大吾はいなくて「ウメヤマダイゴロウとかいう人が居るって聞いたんですけど」「えっ!そのために奈良から来たの?ウメハラでしょ!アイツは今いないよ。アイツは凄く強いけどね」とやり取りして、その後に名古屋で大会がある時にそれぞれの友達を通して連絡を取り合って梅原大吾といっしょに遊ぶことが出来た。それからしばらくは「ウメハラってすげーやつが居るんだ。あんな技やこんな技を決めてくる」って話で盛り上がったり、ウメハラと交流があることを誇らしいというか、友達にすごい奴がいる自慢をした。
それが、自身で大会優勝を狙うようになるとウメハラも敵である。実際にはウメハラはそこまでライバル視していなかった。普通のプレイヤーで神輿に担がれた状態で、ウメハラが教祖なら担いでいる神官が悪い奴らだと思っていたので、そっちをつぶせば自分が勝てると思っていた。そしてその大会ではウメハラがベスト8で負けて別のやつが優勝した。教祖がいないと混沌だ。やがて俺がそういうことに興味をなくしても昔につるんでいたやつが「ウメハラは凄いよな、それに比べてお前はどうってことない」と話をもちかけてきて、殺意を覚えるほどに恨んだ。腹立たしいが、そいつを殺してもウメハラを殺しても多分どちらも何も起こらない。いや逮捕と殺人事件は起こるけど、そういう意味ではなくマスコミ的なやり口の全てが腹立たしかった。
だけどまあ、格闘ゲームなんて枯れ木に花が咲いて見えるのもウメハラを担いだ雑誌やネットメディアの賜物であるから、俺は俺でひとりでシューティングでもやろうと思ったんだよな。シューティングのスコアをやっているとマイナ競技では全国1位を狙えても、人気のあるゲームでは自分がどうってこと無いことが良く分かる。それで、その分を知った上でハイスコアを狙いながらどうにか取った怒首領蜂の1周オールが自分でとても誇らしかった。重装機兵ヴァルケンの全国1位をビデオに取る前のこと。自分に全国1位など夢のまた夢と思いながらもひとまずのゲーセンゲーム1周クリアだととても嬉しかったんだ。
だけど、大阪でやっていたことだから奈良まで土産話に持って帰ると下手くそ小学生の面影から大法螺だって言おうとするキューピー堂の考えは分からないでもない。だから、キューピー堂のルールで過去に解いたことを証明するのにその証拠を集めるのではなく、今からもう一度解いて見せれば納得するのかな、と考えるから40歳の今からでももう1回やってやろうって話になったんだ。
なかなか、それが思うように行かないんだ。というか、既に怒首領蜂サターンモードで1周してるんだけど、まだキューピー堂がな。