プログラムがわからない同級生にもっとやさしい説明を試みたら

「ちょっとまて、説明されて分からないことなんて無いと思っていたが、もし説明されて分かるならオレとっくに高校の時に数学分かってるわ」と相手もオレなので俺と区別がつかない台詞なのだが相手の台詞です。小学校の塾からずっと一緒でいつも一番話が分からないやつだと思っていたけど、進学校で優等生の集団に囲まれた俺にとっての「普通のやつ」の代表がその人なので、俺が人としてのバランスをとるためにその人との会話は欠かせない思考材料になっている。俺の考え方は分かってくれないが相手なりに何かを考えて動いているので彼が何を考えて何をしようとしているのかは常に興味の対象だったな。ずるくもあるが、どうしてそんなに簡単に人を裏切るずるをしてそこまで人の輪から外されるでもなく円滑に回っているのかとかも不思議だった。
最近にして思うことは俺をやたら敵視していたグループの名字を並べて眺めてみると農家由来の名字であり、俺の仲の良い名字を並べてみると特にこれといった傾向は見つからない。それは単に農家由来の名字が多いのでふたつに分けた時に片側に農家が多く感じただけかも知れないのだが、戦争が終わって民主化されたあとでもわけなく旧家を憎まれているのかなと思ったこともある。俺は公家の末裔であることが名字から窺い知れるが母親は農村生まれで父方の祖母までは俗に言う良家というかまあ簡単に言うと金持ち同士の婚姻関係にあるんだよな。
そこらへん、両親は戦後育ちなので中流を意識していたが親戚一同からすると長男である親父の子が相続権として一番強いのを分かっていたので、周りの人間は「信長の野望」とか「三国志」みたいなルールで戦っている中で俺はひとりでグラディウスをやっていたという。
個人的には家から出てサバ缶とカップラーメンで過ごすほどやりくりに困ったこともあるし、お小遣いが多くても例えばファミコンカセットは買ってもらえても漫画本やビックリマンチョコはみっともないからダメみたいな空気感はあったし、家庭不和で恵まれていると思われているほど何もかもが好条件だったわけではないと思う。首都圏の大学に合格して一人住まいで苦労して勉強したみたいなエピソードを聞くことあるけど、俺は遅まきに就職してから3年目でひとり暮らしを始めて自殺未遂に追い込まれるくらい苦労した。
だけどまあ、そこからの人生が犯罪者になってムショ暮らしとかじゃないのは実家のお陰なので、現状ではやっぱり俺は目立った努力などしなくても今の暮らしがある程度保証されていたという特殊な立場の人間だったのかなとは思う。だから俺が親のコネ無しで家を飛び出して暮らした数年間は地元の人からは目的不明だったし、俺の動機も親の加護だと思われたくないという世間体のようなものが大きかったので、金持ちの息子が道楽してお父さんが困っているみたいに思われることさえ内向的に我慢すれば外交的な苦労など何ひとつしなくてよいという、とても情けない現状がある。
ただ、マトモな初等教育を受けて日本国憲法の勤労の義務を果たすべきだと思っている小中学生からするとずっと籠もってネットで遊んでいるオッサンというのは理解の範囲外で排斥すべき異物なのかもしれない。プログラマーという仕事も俺の世代では新しくて他業種の人には意味のわからない仕事だったからね。仕事をしているという承認が得られていなかった。力仕事じゃないから。だから俺の感想としては仕事してもしなくても近所の反応は似たようなもの。会社でもプログラマーって特殊な扱いを受けるから。


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