おやじの店にお役所から富士通の注文が3台入った話

まあ、お役所で使うパソコンとなると昔はNECがデフォルトだったような。

俺もNEC好きで京橋のビルを見学させてもらったことはあるが入社は出来ず。

20代は大阪市中央区のマンションに住んでいて市内の会社どこでも自転車で行けたので、呼んだらすぐ来てくれるし技術者として充分詳しいと評価を受けてまあ便利に使われていたわけだが使われることに自分の存在意義を見出していたことも事実。

そんでコンピュータが置いてあるところならどこでも顔パスで入れてもらえた。よく来たねと言われてマシンルームに通してもらって社内のシステムを見せてもらっていじくる。それまで2000万円くらいのメンテナンス料だったのを30万円くらいで請け負っていたわけで、まあ俺がやらなくても遅かれ早かれ誰かがその値段にする日は来るだろうという感覚でどんどん仕事をしていた。

初めて勤めた会社が超ブラックで急かされてイソイソとプログラムを組むのに慣れていて、パソコンを起動してまずタバコ、コーヒー、3行くらい書いてコンパイルして休憩、1日の仕事はそれで終わりというような一般的なラクなITのイメージとはかけ離れた猛スピードの改修作業で、あんまり速いから開発や回収ではなく外から見たら営業に行っているか搬入を手伝っている程度にしか見えなかっただろうと思う。

そういう仕事は大阪のオフィスでは喜ばれたが、富士通なんかはそれまで2000万円取っていた側なので、ひとたびメッチャいじめられたけど、山の中の工場まで見学に来てと言われてハードウェアの製造ラインの人全員で頭を下げて迎えられた。忙しそうだった。

NEC無人になって暇そうだった。ビルに通してもらえるのに仕事がもらえないのが不思議だった。

しかし、原因は最近なんとなく分かってきている。将棋ベーシックをオープンソースにしたのをNECの偉い人がながめてくれて「ミヤザワくん、これ歩兵が1になってるのキングが1にならないもんなの?困るよ歩が1で王将が8なのはぁ。NECに入りたかったらそういう事に気を使ってほしいんだよねー」という話だった。

俺はそういう事は何も考えずに組んだ。歩から香車、桂馬と順に番号を振って作ったからだ。何となく子供の頃から将棋で大切なのは歩という刷り込みもあった。

同じように3Dの球体を出すプログラムで半径をnとしたものを大学に納品したら「半径はrです!アカデミズムを全く分かっていらっしゃらない!」と怒られたこともある。

アカデミズムを辞書で引くとふたつの意味があり、真理を探求する立場という意味と官学という意味があるようだ。たぶん後者の意味だなと思って放っておいた。

しかしまあ、退職しておやじの店を邪魔していると仕事で使うパソコンのトラブル解決係になって寝床とメシがタダなのを差し引いても会社づとめより割に合わないのだが、もともとそういう事はタダでいいと思っていた部分もあるので引き受けている。

先日ついにお役所から富士通のノートパソコン3台持ってきて、という注文が入った。富士通にセットアップを頼む予定だったのが、ミヤザワさんに頼んだらしてもらえるらしいで、となって俺がCoCo壱番屋のチキンカツカレー1杯で引き受けたのだ。

注文が細かくてひと晩徹夜したが、自己満足の行く出来になって、パソコンを納品するたび親父が何度も電話でお役所に呼び出されることが無くなった。

富士通の人から「こっこっこっ、この値段ぜったいよそに言わんといてくださいや!」と言われているので値段は秘密である。次の日も親父はほっかほっか亭ビフテキミックスを買って帰ってきた。