ギターは魔法の楽器だと思ってた。そして本当の魔法の楽器、既に持ってた。

小学校でリコーダーとピアニカを習ったくらいで、姉のピアノを触ってみて怒られるくらいの楽器経験の無かった俺だけど、ファミコンゲームボーイの音楽が好きだった。

普通高校で軽音部デビューをしてなんちゃってでやめる凡人コースに乗るはずの俺が親がギターなんか買ってもどうでダメでしょうみたいな感じで冴えない高校生活を送り、そして20歳でパソコンを買ってからバイトで貯めたカネでヤフオクでシンセサイザを買い、ロクに弾かずに放って友人から壊れたギターを押し付けられて他の人に貸してそのままにされ、そんなことは忘れて一般就職して、趣味は相変わらずテレビゲーム。

けど、そのテレビゲームが狭い世界ではあるけどアメリカで認められるほどにいつの間にか成っていて、なんか妙に自分に自信がついた俺はマリスミゼルのマナ様が幼少の頃からクラシックをしていてバンドマンになったという経歴を思い出して、中途半端なポップスばかり聴かないでクラシックも聴こうと思ったのが25歳。iPod日本発売の年だ。

そうしてiPodを日本ではじめの頃に持っているというだけで心斎橋でDJごっこをして、本職のミュージシャンの方から新しい機械持ってるだけなのにと冷ややかに扱われた。プログラマとして5年目くらいなので下の仕事してもらったカネを完成品で遊ぶのに使って何が悪いと思っていたけど、実家がそこそこ金持ちなので下の仕事してるのを知らずにカネで良い機械買っただけのやつ的な冷ややかな視線は多方面から浴びせられた。

それでも、良いものを持つというのはモチベになってiPodでアップルに惚れた俺はMacとギターを買った。ギターは壊れたギターをカウントすると2本目で32歳くらいの話だ。どうしてギターなのか。Macがあればそれで作曲できるのに。俺にとってギターは夢のような魔法の楽器であった。

それはB'zがボーカルとギターのデュオなのにバリバリのロックサウンドであり、3人組から音楽性の違いで二人になったドリカムの楽器担当も中村さんのギターなのである。ルナシーだってツインギターだしGLAYだってツインギターだ。ギターが上手くなればB'zでもドリカムでもGLAYでもLUNASEAでも弾けると思ってた。いやちょっと嘘だけど、LUNASEAの曲の一部はSUGIZO様がバイオリンで弾いている設定なのも知ってた。

しかし、自分で弾いてみて出る音は想像とは全く違う音色だった。

「これがギターの音なのか!?」と思った。

それから俺はマンガ「けいおん」を読み、ギターとドラムとベースの3つでバンドサウンドになることを知った。(いや、冗談ですよと断りがいるくらい本気で)

仕方がないのでMacで音を作ってギターを弾く真似だけした動画を作ってYouTubeに弾き語りが数人しかいない頃にアップできて、ゲーム仲間に拡散してもらって伸びた。虚像の俺が出来上がり、ツイッターを自分で始める前に俺の名前のツイッターがいくつも出来て自分のハンドルに結びついたアカウント名でアカウントを作れなかった。

拡散力は弱まる上に実家の住所がバレて家の近くに遊びに来てヤンキー座りでたまる人とかが出てきて、騒動をおさめるためにいっかい動画を消した。

また、ギターは持っているだけで大して弾けないのもインチキだと非難する人もいた。

それでギターへの幻想が破壊されても、YouTubeでギターの先生をしている筋から「チミのやりたい弾き語りはこうすりゃ出来るんじゃないのかね?」と言わんばかりのテクニカルな弾き語り動画が投稿され、ギター1本でもやろうと思えばここまでできるんや!という感動から、練習はあきらめなかった。

見てすぐ出来るほど甘くはないし、一部の人からは既にインチキの烙印を押されている中で、自分の過去への精算のためだけにギターを9年稽古した。ちょっと形になった。

YouTube弾き語りはブレイクしたのかどうかは分からないけど、やる人が増えて自分より上手い人がゴロゴロいるという感覚になっている俺と、その感覚から自分が上手くなったという自覚のないまま旧来の友人との距離がいつの間にか離れていた。

そして、最近では特に何かあったわけではないけど、ピアノでの弾き語りも出来たらもっと音楽の幅が増えるかなとヤフオクで買ったシンセサイザを良く弾くようになった。

文中には初登場だけどヤフオクシンセは32鍵で低音がならず88鍵は置き場がないので60鍵くらいの中途半端な、だけど素人には多機能すぎる小室哲哉と同じモデルのRoland JUNOを買ったんだけど、最近ではケースに仕舞って物置に放置されている。

それと違ってカシオのSK-1は小振りなので部屋にずっと置いてあって、パソコン机の横に立てかけて退屈したら膝の上に乗せて弾いている。やはりこの慣れは大きい。

ギターは魔法の楽器ではなかったけど、魔法のように操る人はいる。そして、自分の膝の上に乗っているシンセサイザの機能も少しずつ使いこなせるようになるとともに、単純に電子ピアノとして使った時のピアノの腕が良くなってきて、これぞ本当に魔法の楽器と思えるようになってきた。

そうして、自分で演奏する音楽が本当の趣味になった時にたまには流行りの音楽も聴いておかなくちゃとYouTubeでミュージックビデオを視聴するとRADWIMPSのボーカルも髭男ダンディズムのボーカルもピアノ弾いてんの!シンクロ率高え!

ピアノもちょっと上手く成れたらなって思うとこれからも頑張れそうだぜ!

愛にできることはまだあるし、それが宿命ってやつなんだな。