ミスリル銀実在論

ファンタジー世界、とりわけファイナルファンタジー世界には、
ミスリルという軽くて丈夫で美しいと三拍子そろった魔法金属がある。
魔法金属ミスリルは実在するか、というような難しい命題ではなく、
子供の頃は、話で聞いたものとテレビで見たものと、本で読んだもの、
それに実際に体験した記憶との境界線が曖昧で、溶け合っていた。
ミスリル銀は、軽くて丈夫という事で、アルミニウムなんだろう。
中世ヨーロッパにはアルミが無く、エルフの国で作られたアルミは、
人間界から見ると魔法金属であり、現在は1円でも当時は貴重だった。
漠然と、そんなふうに思いを巡らせた。
しかし、ミスリル銀は想像上の金属であることが現実である。
アルミより、チタンの方がいいかな、と最近は思う。
ミスリル銀はアルミでもチタンでも、その合金でもなく、
本に書かれたミスリル銀の特徴からアルミやチタンを思い浮かべる事、
それを「連想」というのが正しい言葉の使い方である。
ミスリル銀が思い描かれた時代には軽くて丈夫な事は非現実であった。
非現実だが理想であり、その理想に向けて人が努力した結果と、
現在の合金技術の到着点は近い所にあり、似たような軌跡を辿る。
それでも、ミスリルとアルミは別物であり、別世界の産物なのである。


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