- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/11
- メディア: 文庫
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「敵の敵は友」という我が国の諺はどれくらい信頼性があるか。
イエスキリストは仲間に金銭で売られて、裏切られて死にました。
人の心は移ろいやすく、昨日の敵は今日の友とも言いますから、
敵の敵は友が成り立つ条件に遠友近敵という考え方も必要でしょう。
戦国時代の陣取りに置いて敵国の隣国と同盟を組んで挟み撃ち。
この事に関しては敵の敵と陣地を半分にして相互利益があるから、
充分な算段があった上での強い同盟を組む事ができたのでしょう。
この「充分な利得で結びついている」ということが同盟の最大条件で、
もっと上の利得が得られる場合には損得勘定で裏切られてしまう。
安い報酬とか、師弟関係とか、友情とかで結びついていると、
大きな報酬を示された時に人間はどうなってしまうのか。
なんか漫画「カイジ」に出てきそうなテーマではあるけれど、
僕はそう言う固い友情みたいなのは信じて裏切られた経験もあって、
どちらかというと借金の口実に「俺とお前の仲じゃないか」と使い、
ちょっと小遣いを掴まされると簡単に裏切ってしまう印象ですよね。
このへん、金銭感覚の違う上流社会においてのほうが付き合いが大切。
上流階級での友達付き合いは情報交換の観点から小銭より利得がある。
それに高い教育ほど道徳が重んじられるという傾向もありますよね。
そういうところに付け入る商売を悪徳商法と言う。裏切りですよね。
そういう風に損得で考えると、かえって難しいというのが政治です。
政治家も選挙の時は甘い事を言って後から裏切ることもありますから、
グラフの用に損得を比べて判断するということが簡単にはできません。
これは民主主義の近代における普遍的なテーマなのかもしれませんね。
社会階級があると身分の違いが、きっと悪いと貧民は思ったでしょう。
それが革命が起こり民主主義になって平民から政治家が誕生する。
その政治家を選んだのは誰かと言うと、それは自分自身であるから、
誰が悪いか辿っていくと自分に辿り着くパラドックスに陥ってしまう。
そう言う仕組みを作った先人と歴史的な不可抗力が積み重なる現在で、
ここを叩けば、潰せば、解決すると言う簡単な敵がいないんですよね。
騙されちゃいけない、しかしウソを承知の上で候補者を選ぶしか無い。
全員が充分に食える飯が無いなら皆でひもじい思いをして分け合うか、
誰かを見殺しにして満腹を食うか選ばないと行けない。
その結果自分が飯にある付けずに死ぬリスクも背中合わせにね。