ウメハラを倒すには


ストリートファイターIII3rdStrikeはカプコンのゲームだがカプコンの公式全国大会は行われなかった。その行われなかった経緯は詳しく知らないが、そのために全国のプレイヤーがネットで相談をして、公式大会の代わりに団体を設立してカプコン共催の全国大会を行った。その優勝者は後に自殺した。


ウメハラと言う男がいる。カプコンの公式全国大会を2度優勝してアメリカで賞金大会に勝ちプロプレイヤーとしてファンからは神と崇められている。


では、ウメハラに勝つと神に成れるか。


答えは否。俺もウメハラには勝ったことがあるが神にはなれなかった。ウメハラとは何なのか、何故に神と崇められるか。


ウメハラは俺も勝ったことがあると先に書いたが、自分で対戦してみてウメハラより勝算のないプレイヤーというのは全国津々浦々にいくつもいる。しかし、俺は大阪のある大会で決勝でそういう人と当たり、ああ、万事休すと思った矢先に穿弓腿というスキだらけの大技を相手が繰り出してきた。そのスキに反撃を入れて俺はいっとき大阪の商店街でスーパースターとなった。


また、友達のプロプレイヤーでウメハラほどではないがファンがいるようなやつに誘われてアメリカに旅行した。そこで同行者が日本人であるというだけで、アメリカ代表から日本対アメリカの団体戦を申し込まれた。今から考えると旅行者混じりの日本人を負かしてテレビ放送しようという罠だったかもしれない。テレビに映せばどうせ元々誰も知らないのだから、顔が黄色いヤツを負かせばいいのだろう。その大会でも、辛うじて出来るレベルの腕前ながら参加を受け入れた。ショーアップされたブースの中で俺は中堅としてアメリカ代表と負けじと戦い、そしてガードの固いにらみ合いになり、少し会場が冷えてきた。そうすると、そのプロはスキの大きな足払いをブンと空振りして、また大阪のいつぞやのように俺はアメリカで有名な日本人になってしまった。


しかし、日本に帰ってきてみると日本対アメリカのその大会は雑誌の白黒ページに小さく集合写真が載っただけで、ウメハラとは扱いが随分ちなうもんだなとは思っていた。




ウメハラとは何なのか、大阪でいちばん強いと言われる橋本ガイルの話を例にして説明しよう。ストリートファイターIIはガイルがイチバン強い。反論はあるかもしれないが、そこは我慢して読んで欲しい。


ガイルが負けるとすると、体力を削るためのソニックブームを打つ瞬間に飛び込まれて投げ技を決められる時だ。特にブランカのシャンプキックはガイルはサマーソルトキックでしか返せない。ソニックブームを打つとスキが出来てサマーソルトが間に合わなくなってしまう。


では、橋本ガイルはどう戦うか。


橋本ガイルは大きな隙のソニックブームを連射と見まごうほど繰り出して来る。ブランカはもちろん飛び込む。そうすると、ガイルもジャンプして空中でチョップして迎撃するのだ。橋本チョップと言われて大阪どころか奈良でも流行した。


ところが、この橋本チョップ、ブランカが先にジャンプキックを出すと負けてしまう。正解はソニックブームを打たずにひたすらサマーソルトの準備をしてにらみ合いをすることだと俺は考えている。


ガイルが本当にサマーソルトのにらみ合いをするとゲームセンターは冷えきってしまう。そのため、ガイルのスーパースターはソニックブームを連発する。はっきりいって華やかだ。しかし、同じことを真似しようとするとブランカのジャンプキックに負けてしまう。言われてみると、簡単なトリックだと思うだろう。ようするに八百長なのだ。


そうと分かると橋本ガイルにブランカを使えば勝てるかもしれない、と思うだろう。ここが八百長八百長たる所以、トーナメントは橋本ガイルより腕のあるリュウがひしめきあって、ブランカでは勝ち目が無いカードになっている。ブランカで参戦すると漏れなくリュウと当たる。


橋本ガイルは永遠の伝説であるが、ある同窓会的な大会で橋本ガイルが参加すると噂を聞いた。俺は友達をみんな誘ってブランカばっかりで参加する作戦を立てた。俺がネットで友達をみんな呼べば橋本軍団のリュウよりも数が多いと睨んだのだ。


結果、橋本ガイルは会場に現れなかった。


翌週、また同じような大会が開催されて橋本ガイルが優勝したと10円コピーで印刷されたビラがゲームセンターに届いた。ああ、しまった、その日は仕事で行けなかったよなと悔しがる。ブランカばかりの大会は名も無く通り過ぎたが、橋本ガイルはまた伝説と成った。


ウメハラも伝説の生き物である。しかし、俺はあまり信じてはいない。


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