中学理科


俺は中学高校と同じ私学で高校入試の勉強で言うとワンランク下の高校にしか入れない成績だったので進学のとき転校を勧められた。しかし食らいつくように高校に進学してそれから勉強で追いつこうとした。(ゲーセンにもだいぶ通ったが)それで、高校の授業は何が分からないのかすら分からない部分があった。読書好きで国語だけは学年トップクラスだったが数学も物理も嘘だと思ったし、社会科も好きな倫理だけはやったけど歴史や地理はサッパリだった。


それで今になって中学の勉強の基礎が分かっていないから高校が難しかったのではないかと中学の学参で勉強している。まずは得意科目の国語でも現代文と漢文は良かったが古文が悪かったので中学古文からやりはじめた。俺が高校の時は古文は高校科目だったが今は中学で習う。教育も変わっている。古文はスラスラと入ってきて苦手意識は無くなった。


しかし、中学理科をやっていると分かる部分もあるけれど、ニュートン力学まで読み進めて、台車を押す時の力の働きは嘘だなと思うようになった。なぜなら、台車にかける力は取っ手を押す事から始まるけれど、取ってから本体に伝わる力や本体が動こうとして車輪に伝わる力などは全て省略されている。これは細かすぎる突っ込みのようで、しかし大学の工学くらいまで、そういう単純化が足を引っ張るんじゃないかと考えている。


台車にかかる力と車輪の軸受けの仕組みなども細かくして行けば力点や作用点で説明出来なくはないけれど、台車自体をモノとして扱っている事や重力は地球の引力だとかだんだん習う事が難しくなるほど国内に根拠が無く学術的先進国から輸入されたモノを妄信している。「なんでなん」といっても先生もわからないようなことなのにだ。


これは社会人になってからプログラマとして設計事務所に勤めた時に読んでいた小説がみごとに建築ネタで(偶然)それから建築や工学に興味を持って独学で本を読んだりしたけれど、実務でやる事に比べて教わる内容がスカスカに思えてならなかった。


俺は数学でもプログラムを覚えてから公式に実数を入れてみて実験証明の出来る数学(物理数学に近い)と空論におもえる純粋数学とのギャップは高校のとき感じたそれそのものだと分かったし(今は高校のほうが変わった)理科にもそれに近い教育と現実との乖離みたいなことは中学から始まっているんだなと分かるようになった。


中谷宇吉郎先生の「科学の方法」という本の中で「科学というものがただひとつの真理を見つけ出す性質のものならば、やがて科学はすべての真理を見つけ出し世の中のすべてを解明するだろう」という下りがあるのだけれど、ここをある友人は「そうなんだ。こんな古い本でそう書いてあるくらいだから今は科学で何でも分かるやんな」と話していて驚いた。これは国語がわかれば真反対の意味を示す反語という用法なのだ。科学というのは真理を求めるものでなく、事象の輪郭をあぶり出すため人間の五感を道具によって増幅してもって、ものごとの再現可能性を突き詰めているにすぎず、真理とは言いがたいというのが本全体の主旨なのだ。


とまあ、国語は勉強して良かった。そして、理科もまた勉強し直して良かったのだ。国語とて「かしこい」は物覚えが良いとかいう意味しか辞書に載っていないが、発する人の音程のトーンひとつで反対の意味になったりする。国語もまた教育だけでは不完全だし、俺は国語の成績を学校教育だけで身につけたのではなく雑多な読書で手に入れたものだし、理科もまた実験の成果を待つ粘り強さでもってすれば教育はガイドラインに充分なるだろう。


結局は「真理であるかのような教え方が誤解を生む」ということくらいか。


力学は物理をさんざんやった後の理解であるから中学教育は目をつむるとして化学や生物の基礎はやっておいたほうが高校に繋がる。やさしいことから段階を経て難しい事に行く仕組みは分かるが、省略というのは時に正しい理解を求めるものへの障壁になるものだ。だから物理は大学の工学のようにネジ1本の仕組みから入って台車を目指すほうが良いようにも思える。どうだろう。


追記。酔ってます。


「モノに受け止めるものや吊るすものが無くなったら下に落ちるので重力という見えない力がある」という仮説を立てたのがニュートンで「重力があるのでモノが落ちる」と教えてしまうのは逆説。


同じように高校物理で出る摩擦係数も、ものの滑る距離から逆算して出したものが摩擦係数で、「ゴムの摩擦係数が高いからゴム同士を合わせると滑りにくい」みたいな論理はやはり逆説。


キログラム原器とかメートル法とかいう科学の歴史と比較して、俺が学生だった頃の教育カリキュラムは全部逆説的だと思うのよな。酔ったから勢いに任せて書いているようで、書きたいけれど我慢して書かなかったことが酔いでブレーキが利かなくなっただけの話。酒を飲んだら閃いたわけではないのだ。


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