疲れたよ


俺は経歴に書かれている会社の名前だけ並べると日本の有名メーカーを渡り歩いて仕事をしたスーパープログラマーに見える。見えると言うか、そう見せて自己PRとして自分を売って来た。でもそんな生き方には疲れたよ。幾ら有名メーカー勤務と言っても誰も知る人の居ない所に単身乗り込んで部外者扱いを受けながらプログラムを組んで出来上がったらまた違うメーカーにって。クタクタなのに風邪で一日休んだだけで契約を切られたりする。


25歳くらいがいちばん良かったと書いたけど、それがどうしてダメになったかって俺がコンピュータの世界だけで仕事をしている間は誰も知らなかったしスーツのワイシャツの下にTシャツを着て柄が透けているようなダサいヤツだからバランスが多分取れてたんだ。大阪市内にマンションを借りたら街には若い女がいっぱい居るので自然に人目を気にしてオシャレになったが、目立つと長堀辺りで飲んでいる年配層に「若いのに金を持って遊んでいる」と目を付けられて、それにライブドア堀江貴文逮捕のニュースが重なってIT業界と言うだけでイメージが悪くなった。体も壊した。


俺の住む町は高齢者が多くて俺は36歳なんだけど遊んでいるから大学生かなにかとよく間違われて、外に出かけていると近所の人は大学生だと思うんだけど出かけるのが面倒だから近所で飯でも喰おうものなら「浪人生?落ちたん?」と噂されたりする。見ず知らずの人にだ。おれは18年前に大学に落ちたが、今でも「落ちたん?」なんて噂されると会社員として働いた15年を忘れ去って18歳の時のことばかり気になってしまう。そういう人にいちいち全部36歳ですとか早期退職社ですとか捕まえて説明するわけにも行かないので隠れて暮らしたいと思うけれど、ちょっと静かに暮らすには俺の住む街は人も店も多すぎるし、引っ越してその先で今と同じダラダラした暮らしをするほどの予算は多分無い。


疲れた。本当にもう。ゲームする気も起きないほどグッタリだ。


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