俺が20歳の頃、ケータイにカラー液晶になって真っ先に買った。
今では国民全員カラー液晶のスマホは当たり前なのだが、当時としては目新しいものだった。それを買った俺に親父はこういった「電話番号に4が入っとる!四は死で九は苦や。そんな番号しか貰えんようではまだまだやのう」
親父はお役所に機器類を納品する仕事で、例えば大阪市役所は地下鉄の駅のA1出口からすぐそばというように、お役所というのは番号やアルファベットの良し悪しにとてもうるさい。親父はそうなんだなぁとその時は単純にそう思った。
だが、最近では親父が貧乏なので俺がバイトして買ったケータイに当時はまだ家にいた母親や姉が喜んだので、何かケチを付けないと気がすまないというような動機で4番の話をしたんではないだろうかと思うように変わった。
それは俺が4番を気にしてPS4の購入に踏み切れず、モンハンアイスボーンを遊んでいるという池ちゃんからの誘いも断って、仲間はずれにされながらYouTubeで指を加えてモンハンの動画を見ているのに、PS4を今更に買っても来年にはPS5が出るし、PS2のゲームは発売すぐは楽しかったが、今では飽きてたまにするだけである。
XBOX360も仕事の付き合いで一緒に買ってすぐに飽きて放っている。世の中は消費で回っているので、働き盛りの人はゲーム機を買い換えるのが仕事で据え置いて遊ぶのは本業にしてはいけないかのようである。
くだらないことにこだわっているが、いつも夕食は親父とふたりなので、オヤジのヒトコトから悪い言葉が発せられると精神的なダメージはきつい。俺は精神傷病者である。
母親は親父を捨てて出ていった。姉は結婚した。弟は上京した。しかし最初に親父が嫌で家を出たはずの俺は病気して仕方なく身寄りの親父と同居である。食事の世話をしてもらっているので、はじめて甘えてみた親父には優しいところもある。
池ちゃんとは十年ぶりとかなので、俺の事情など知らずに楽しそうに遊んでいるなら、俺が咎めることはなにもないのだが、なぜモンハンに付き合わないの理由があまりにも呪いのような気持ちの悪い理由なので、メールなどには乗せられない。
子を呪うのは親父が役所にガミガミ言われた八つ当たりなのだろうな。池ちゃんとの付き合いを我慢するか、PS4を買ってその4にまつわる思い出の気持ち悪さを我慢するか、何にしても交際範囲が広がると文化の摩擦があるので共感の難しい概念が発生して、説明できないでもじもじしているともっと何か悪い方に邪推されるという悪循環に陥る。とかく、はやくPS5が出て、それでもっと面白いゲームが出て、ナンバリングやネーミングが良くて、その発売日にちゃんとお金の準備をして、遊ぶ余裕があってと考えていくと、親父がうるさいのか俺が贅沢なのかどっちかどっちもだ。