いったい何からの自立なのか

せっかく親から自立して仕事をしてマンションに引っ越したのに、会社員である以上は上司に逆らえない。ではその上司は本当に子供の頃に反発した実の親父よりも高い理念で仕事をしているかと言うと私利私欲のために動いているように見えて、それなら親父と和解して二世帯で住むほうを選択した。

もともとうちは自営業で親父は俺には家を継ぐより好きな仕事をして欲しいと語っていたけど、その仕事で自分の信念を曲げることに抗えない無力感みたいなのが俺の抱える鬱屈だよな。あきらめの感情が芽生えた人間がもういちど夢を持って自分には出来るという強い意志を持てるかどうかは分からない。酒もタバコもするようになった。

こうして書き出してみると、何かに抗うように生きてきて抗えないと折れた相手が権力であって、そこからもらった退職金で生きているわけだから、完全に屈服していることになる。

手続きをする前には親父は「そんなカネもらうな!」と言ったが、そこだけは親父に抗ってもらえるものはもらっておいた。3年も経ってみると、親父ももらえたこの生活のほうが良いようだ。野党派についていた親父だが自民党の政治家がウチに訪問に来たとき頭を下げていた。

変わったのは、ワイドショーでコメンテータがゼネコンを叩く発言をしなくなり、不動産関連会社のコマーシャルが増えたことだろうな。マスコミは政治家やゼネコンを叩いた過去があるが、コロナ禍で関西では吉村知事が毎日テレビに出ている。ドラマの描きようひとつであんなに悪者だった大企業が若い会社員の頑張る場であるように違った印象になっている。

怖いなぁ。俺の若いときのやる気もそういう風にイメージで形作られたものへの敵意だったんだろうな。そしてテレビは見てはいけないみたいな言説の文章も見なくなったよな。あるところには今もあるのかもしれんが。俺の目には入らなくなった。

 


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