フルオート・セミオート

斉藤和義さんの新曲「シグナル」の出演女優さん。さくらんぼをパクッと。

俺が初めて持ったアップル機器はiPod第三世代で日本国内では多分初号機。

ウインドウズXPにiTunesを入れて使っていたのですが、まだ日本ユーザーが大変少ない時でした。iTunesが他のmp3プレイヤと何が違うのか、韓国製のmp3とかの方が小型でコピープロテクトなどもなく使いやすいのに何故アメリカ製のモッサいiPodを使うのかと不思議がられました。

俺はソフトウェア技術者として気づいていたのです。今から考えると損なのか得なのかは分からないけど、iTunesはブロードバンド時代の到来を見越して、単なる音楽プレイヤではなく使用者がかけた音楽を音楽ファイルとしてではなくアーティスト名やジャケット写真に音楽ジャンルに年代など種々のパラメータを持った音楽データベースの完成を目指して、そのために入れた音楽を自動で読み取ってタグ付けするソフトなんですよね。

まあ、使用感としては「曲名が自動で入るMD」くらいのものですが、使い出してすぐに不思議なことが起こり出したんです。自分の音楽性向は流行と当時までちょっとズレていて、バブル期に200万枚くらいレコードが売れていた時代に40万枚くらい売れたちょっとマイナな。今時でいうと40万枚って多分規模感が分からないと思うので補足すると、バブル期って40万枚はスマッシュヒットと言ってテレビタイアップで15秒だけ使われた曲で雑誌に写真が載って「あの曲誰だろう」と思った人が読んで買うという数字だったんです。テレビに本人が出ると100万枚くらい行ったんですよね。

それでマイナと言っても充分に有名とも取れる、普通の人とミーハーで同じじゃちょっとイヤという坊ちゃん嬢ちゃん感の満点の懐かしい楽曲をiTunesに入れてヘビロテしていると、有線やテレビや都市部のライブハウスでかかる音楽が全部自分のiPodの曲と同じになったんです。

AIブームというのはまだ来ていなくて「iPodに色々の曲をブチ込むと機械が自動でDJしてくれるんだ」というと「ランダムでかかってんのが偶々気に入っただけじゃね?」と笑われたものです。

そうすると有名な漫画家さんがiPodを買った話を雑誌に寄せて「展示会場でかかっている音楽は何ですか」と聞かれ「iPodに自分の懐かしいレコード入れたら機械が勝手に選ぶんです」「ウソでしょ?すごくいいよ」というエッセイの一節がありました。

まあ、最近の例では「アマゾンでお買い物すると『あなたへのおすすめ』に出てくるものが心を読まれたようで怖い」という話から、怖すぎて売れなくなってオススメの精度が下がったという話があるように、音楽も自分が好みで選んでいるようで、種々のメディアクリエイターが狙って「こう人にはコレ」というものを作ってきた時代があるんですよね。

まあ言うなれば村上春樹が好きで小説に出てくる小物やレコードを集めちゃう「ハルキスト現象」とかが作られた現象で、その現象で得心する人もみなメディアに好みを操られて過ごしているんですよね。

例えばミスチルという100万枚アーティストひとつ取ってもイノセントワールドが好きというならスポーツマンで夏にアクエリアス飲んだとか、クロスロードから追っかけているとか、幾つかの可能性が枠組みとして出てきて、大抵の人はそのどれかにハマる。もちろんiPodもその例外ではなく、韓国製のmp3使ってるとコスト意識が高く安い買い物をする人だけど、iPodを初期型から買うとなるとアメリカびいきで原産地に鈍感とか、多分俺みたいなやつの性向が割り出されて「こいつが聴いた音楽集めたらアメリカ資本のアップルが置き網魚法で小魚ピッチピチ」みたいなことだと思うんです。

100万枚のソニーユーザが韓国産に乗り換えんとする時代に40万枚アーティストのファンをごっそりアップルがいただきだ!という寸法だったと。

そうして、ひとりのオクレ男が根こそぎ音楽性向から分析されて、世界にウケる日本のオタクとかオタク復権みたいになったのは、アップル社の市場調査に引っかかったサンプルがUFOキャッチャーでアンパンマンがいっぱい入ったカゴに一つだけ入っているロールパンナちゃんを間違えて取って代表値に加えてしまったってことだと思うんです。

そうしてアップルでもなくフェイスブックでもなくアマゾンでもなくそう、グーグルです。グーグル社が買収したユーチューブの次のおすすめは今年のお正月あたりにシオノギミュージックフェア斉藤和義さんと宮本浩次さんがコラボした「今宵の月のように」を素人が録画して自分のチャンネルにアップした動画でした。

最近怖くないと書いたアマゾンの「あなたへのおすすめ」ですが、俺の場合もう機械を俺が操っているのか機械が俺を操っているのか出されるものに程よく気が利いてフルオートのDJではなく提示される色々の中にちょうど自分の観たいもの聴きたいものがあるというバブル期の日本のレコードショップの丁度よさみたいなものをネットに繋がったコンピュータの画面に感じているのであります。

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