俺が中学2年の時にストIIと出会って、高1の先輩たちに囲まれて遊んでいました。
ストIIの台は玩具屋であったキューピー堂の店内に置かれ大阪から通学している不良の先輩たちの隠れ家、昔のヤンキーが喫茶店に入ったように隠れ家でゲームしていたんです。この柳街商店街はほとんどの人が店やの中にいるので、通行人からはモロバレでも店をしている両親は学校帰りに歩いて1分のところで息子が不良に囲まれてテレビゲームをしているのを知りませんでした。まあ、のちに噂で聞いて黙認したんでしょうけど。
それで先輩たちは寝屋川ABCという大阪のパチンコ屋の2階のゲーセンに強い人が集まっていて参考になると観戦に行き、近所の学校である奈良高専の不良はネオジオを持っていたりパソコン通信をしている人がいました。
アドベンチャーやRPGのようなシーケンシャルなゲームからストIIのグラフィックに惹かれて攻略に参加した多くの先輩は「フローチャート」でモノを考えました。「まず何をするべきか」そして「Aをしてから相手がBをしたらCでDをしたらE」という条件分岐の考え方です。
それから色々とありましたが「まずAをする」ということが本当に正しいのかというところに論点があります。スーパーストIIのリュウの波動拳が速くなってから「打つや打たざるや」が勝負の決め手であり、波動拳を打って飛んだら昇竜拳という攻略から、波動拳を打った瞬間に飛ばれていたらスキにコンボを食らって負け、意表をついて打てたら1ドットリード。安定して打つには大足払いキャンセル波動拳というのが体感的に分かっていました。
遡って、ストIIのガイルでも「まずソニックブームを打つ」とされているところを「しゃがみガードで待って、相手にソニックを打つ空気を悟らせない」ということが重要だと説くのですが「寝屋川では連勝しているガイルが絶対に自分からソニックを打つ」と先輩が断じるのです。
特にブランカ戦などはソニックを打つと後出しで飛ばれてもガイルには返せない間合いがあるのに見よう見まねでソニックを打ってしまう先輩はもうひとりのブランカ使いの先輩に負け続けました。今から思うとお金を払わないで観戦に行くので八百長試合を見せられて騙されたのだと思っています。パチンコ屋だしね。
話をもうちょっと単純にして、ゲーム理論を数学で解くためにリュウで「波動拳」「ジャンプ」「待って昇竜」の三すくみのジャンケンを期待値の差から均衡点を求める。という研究を始めて、ネットにアップしました。モデル自体に賛否はあったし、連立方程式で解けるとか微分するといいなどの意見を受け、結局コンピュータで1%ずつ値を変化させて均衡する点をプログラムで探すという方法で、何キャラかのモデルを解きました。
その結果を知ったものからは「答えになっていない」という批判も受けましたが、それから自分のゲームより動画での観戦に重点を置き、最近までの対戦の流れを見るとそれまであった間合いの取り合いや踊りのような蹴り合い殴り合いは排され、削れる必殺技か、それを止める牽制か飛ぶか対空かゲーム理論で意味がある行動を取るものが勝っています。
キャラ差も以前より顕著に有利な方が勝つように収録されています。昔のビデオがキャラさを隠すように振りがまくったところをドラマティックに編集して販売されていたのかも知れませんが。
細かいテクニックは俺の研究ではなくゲームに取り組んでいる方々のお陰ですが、ゲーム理論を知った上で俯瞰的に行動を決めている人と「相手がああきた、次はこう」と試合中の前の場面で起こったことだけを見て行動を決めるのでは雲泥の差があります。
行動して、返し技とか反撃とか英語圏でパニッシュと訳される行動で「お返しを受けると、それを学習してその行動は取らなくなる」というプレイヤと「まず全ての技には何らかのお返しがあり、決まると何点で返されると何点のジャンケンであり、いちど負けたからといって辞めてしまうと最後には手詰まりになるので、その時々で仕掛けを固定せず、得点を取る可能性のある行動にしつこく賭ける」こういう考え方のプレイヤが勝っています。
まあ総論として、一度きりの勝負とこわばってしまわず負けた行動にもう一度賭けるには、それ以外の行動も見せて同じ場面に違う流れでくる必要があり、軍資金のある方が有利なギャンブルである。とも言い換えることが出来ます。そもそもストIIをそこまで続けること自体、昨今では割安になったものの暇もお金もかかること。
その中で何度やっても特定の組み合わせに勝てない人というのはいて、それは博打が博打であることを許容できず、シーケンシャルに動いているからであると括って終わりたいと思います。