わがころもではつゆにぬれつつ

俺のゲーマとしてのひとつのピリオドはカプコンバーサスエスエヌケイ2。アルファベットで書くとCAPCOM VS SNK2である。

カプコンはカプセルコンピュータの略称として、綿菓子製造機から子供用の遊技台を取り扱っていた辻元爺さんが米ディズニー社を追い、一生をかけて孫の代まで継いできた会社である。

対してエスエヌケイは同じ大阪で分かりやすく言うと任天堂スーパーファミコンくらいの機械つまり軍事用や業務用コンピュータ用に作られた計算機部品を精密さや計算速度の競争に負けて余り出した部品で玩具化して、販売する業務モデルを自転車による営業で店頭用の貸出機として販売して回った会社である。

そのカプコンエスエヌケイも少し間違うと敗れて倒産する過当競争を生き残った会社である。特に1990年代の激戦期は両者とも対戦格闘ゲームと呼ばれるひとり用貸出遊技機で自動営業されているゲームセンターの台を2台相互にケーブルで連動させて、お客さん同士が別々のゲーム機に座って、格闘家の映像として画面に映し出されたキャラクターをレバーとボタンで操り戦うという日本の暗部サブカルチャーを形成した。

リース営業で利益を上げるエスエヌケイに対して、カプコンは筐体の売り切りで営業していたため、ストリートファイターIIがゲームセンターで営業利益を出した分だけ新しい企画が打たれて新台が続々と登場した。

その中で、カプコン社のヴァンパイアでは会社の力つまりディズニーを追うアニメーターを擁した作画力を見せつけるがごとく、精細なアニメーションでキャラクターが生き生きと描かれた。その流れはソニープレイステーションの販売により事業部門がアニメーションと3DCGグラフィックスに分けられた時に売上減少で切り捨てられるのだが、意地を見せてアニメがさらに精細に描かれたのがストリートファイターIIIである。しかしゲームは顧客に受けなかった。

対して、後手のエスエヌケイは相変わらずネオジオでゲームを作っていた。ストリートファイターIIIは作画に力を入れただけでなく、簡単だったガードの操作を難しいブロッキングという新要素つまり合気道の受け流しをイメージして、相手の打撃が来る瞬間を狙ってタイミングを取るゲーム要素を追加した。ブロッキングという言葉は格闘技用語ではなく、モータースポーツで先を走っているクルマを後続車両が追い抜こうとした時に進路妨害をして前を維持する行為のことも指す。

それに対してエスエヌケイの新作は餓狼マークオブザウルフスであるが、ガードの進化系であるブロッキングと餓狼の新要素ジャストディフェンスが比較されやすいが、もうひとつの新要素は必殺技を途中で止めるブレーキングである。

そこでエスエヌケイの開発はいちど止まって、カプコン社がゲームソフトではなくその中の映像で示されたキャラクターを商標として買い取り、両者のゲームのキャラクターを戦わせるカプコンバーサスエスエヌケイを出して3作続いた。そこで格闘ゲームはいちど休戦となる。

さて、時は流れて2021年カプコン社はストリートファイター以外にも売れ筋タイトルを多数準備して安定経営である。特にモンスターハンターは世界1600万本の売上を記録して、エスエヌケイどころか戦う相手がいないような状況まで売上を伸ばした。

しかし経済の成長には普及が終わると故障修理以外に何らかの発展性が必要となる。カプコンエスエヌケイのキャラを買ったのにはゲームクリエイター達が手塚治虫から始まる日本の漫画業界が出版社の手に操られ、商標として扱われる既成品から逸脱したいという思いがあったからだろう。会社はそうではなくバンダイの元でガンダムのゲームの下請けになる道を通じて売上を伸ばした。

その企画をゲーム会社としては古参のナムコが肩代わりして現在のバンダイナムコゲームスになっているのは、ゲームファンの皆様ならよくご存知だと思う。

ソニーの新型PS5はネット転売で価格は高騰、それに対してカプコン社もナムコ社も新製品を供給して、競争は競争としてまだ続いているのだけれど、ポケットの小銭で夢が買えたあの時代の夢は小さな夢であったはずで、札束の紙切れを何枚束ねて数えてみても買えないものだったのかも知れない。


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