魔術は客観

 科学とは論理、客観、実証の三要素を満たすこと。

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 電車でタバコを吸った人に高校生が注意して暴行を受けて重傷を負ったニュースが飛び込んできた。「頭のおかしい人に喧嘩を売ってしまった」そういう人もいる。世の中には色々の考え方の人がいる。スポーツで努力してメダルを取った人は「努力は報われる」と言う。確かに、その人は努力して報われたのだろう。

 とてもつまらない体験談で申し訳ないが、俺は子供の頃にテレビゲームが好きだった。その中でもドラゴンクエスト通称ドラクエはI,II,IIIと夢中で遊んだ。何故かというと、主人公のキャラクターが冒険に出て敵の怪物を倒すと経験値というポイントが蓄積される。この経験値が一定量貯まるごとに「ちから」「すばやさ」などキャラの強さを示す数値が増えていき、もし敵に負けてしまっても即ゲームオーバーというわけではなく、所持金は半分になるものの経験値だけは失われず、根よくやればキャラが成長して遠くまで旅をしやすくなる。もちろん、それ以外にも街の人との会話や洞窟や祠での謎解きもあって、誰でも解けるわけではないかもしれない。ただ「根よくやれば強くなる」「経験だけは失われない」そういうことを覚えた。

 ドラクエIとIIでは経験値を記録するのに「ふっかつのじゅもん」というパスコードが採用されていたが、ドラクエIIIからはカセットのメモリに記録されるようになった。そしてドラクエI,II,IIIの頃は「出せば100万本」と言われファミコンソフトは多種多様に生産され、流通の関係で地方で目当てのソフトを買えるとは限らず、俺は幸運にも三本とも親に買ってもらえたが同級生に「友達やろ?」と懇願されてカセットを貸すと裏切られて返してもらえないという経験をした。特にドラクエIIIは経験値を貯めて育てたキャラクターが入ったカセットなので、努力は実るという考えだったものがデータは簡単に盗まれる脆いものであると考えが変わった。

 そんな俺は中学からゲームボーイでまた魔界塔士SaGaやSaGa2秘宝伝説に夢中になった。携帯ゲーム機なので持ち歩けて、人にも見せられるので、強いキャラを作って同級生に自慢したが、何せ中学なので「そんなの小学校で卒業しろよ」とやや冷ややかに扱われた。それでも小学校のデータは盗まれたので、俺としては自分の持ち物になって他人に見せられることが満足だった。

 20歳になってもゲームボーイドラゴンクエストモンスターズで遊んでいた。敵だったモンスターを仲間に出来る不思議な少年テリーの冒険だが、仲間にして育てたモンスター三体をケーブル通信で他のカセットのデータと戦わせることが出来る。まあポケモンの時に誰とも遊んでもらえず、ドラクエも遊び相手は三人くらいで皆辞めてしまったが、エニックス社主催のゲーム大会があることを知り、雑誌「ファミ通」の攻略を毎週楽しみにひたすらモンスターを育てていた。モンスターは親の能力を遺伝継承する如くデータを引き継ぐので、何世代も育てた。

 断言するわけではないが、大会の現場は大阪日本橋ソフマップの脇の粗末な場所で小学生くらいに見受けられる子供が十人程度、それに当時JUDY AND MARYのTAKUYAに似せて金髪だった俺とメガネで短髪でチェックのシャツを着た暗い雰囲気の兄ちゃんで、その兄ちゃんは予選から全試合偶発的に出る「かいしんのいちげき」を決めて勝っていた。俺は決勝まで進み「だいぼうぎょ」で相手の「かいしんのいちげき」をギリギリ凌いで1キャラ生き残り、ザオリクで全員復活した。勝負は長引き、子供達は無言で見守ってくれたが、実況の人が「もう時間がないから次に1キャラ倒した方が勝ちです」と途中で粗雑にルールを変えて、結果俺は負けになった。

 そんな俺は25歳でネットゲーム「ラグナロクオンライン」に夢中になるが、一人暮らしでゲームと仕事と生活のバランスが上手く撮れず、徹夜でゲームをしてしまい仕事に遅刻したり、洗濯物や風呂の掃除を放ったらかして、結局ゲームは生活の次として諦めた。他の人はどうしてあんなにずっとゲームガ出来るのだろうかと思っていた。

 しかし30代では実家に帰って親父が食事の買い出しと洗濯をしてくれるので、ドラクエXWiiと同梱版で買ってきて、そこにゲーセンの格闘ゲームでやり合ったネット民が加わった。レベルは最初俺がダントツで一番だったが、キャラ名がファンタジー小説から取ったものでそれが俺であると知る人は少なく、誰かが俺の本名でレベル1のキャラを作って歩き回って色々の人に会話機能で迷惑をかけるというイタズラをされ、ネットニュースにも俺のキャラの行動を監視して誹謗中傷するような記事が拡散された。

 「科学的に魔法なんて有り得ない」と思う人もいるだろうが、誰かが俺の本名でゲームキャラを作って迷惑をかけたら、疑わない他人の主観つまり客観的には俺が何もしていなくても迷惑をかけて回っているのは俺に見えるだろう。俺はこういう手の込んだ嫌がらせ行為も魔法であると思った。他人に自分の言葉で何がどう嫌がらせされているのか上手く説明できなかったからだ。「名前が取られた」とか「データが取られた」と言ってもゲーム世界で何が起こっているのか聞く人には分からない。そして俺はまた言ってしまった。「努力は実らない」と。

 その言葉だけがまた一人歩きしてしまう。しかし、俺はまためげずにPS2のペルソナ3をすることにした。客観的に俺のレベルは16である。レベル99のデータを見ても今では素直に凄いと思うのではなく、盗んだか改造かと懐疑の目を向けるが、信じている人にそんなことを言うとやっかみにしか映らないし、実際に上手くアピールして人気を保っている人には嫉妬を覚える。

 ただ、ゲームのデータ以外にも俺の経験値は増えている。また敵にやられてゴールド半分で王様の前に呼び出されたと思うことにした。ここからが本当に努力の真価を問われる所だろう。俺もタバコ注意の高校生と同じでネットにはびこる頭のおかしな人、暇でゲームをしているヤクザ者にネットで喧嘩を売っているのかもしれない。

 果たして勝ち目はあるのか、身の安全のためには負けておくことも時には必要かもしれない。色々の思いは巡るが、今日は今までのことをいちばん上手く説明できたと思うのでこうして記しておく。


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