相殺とマナ損得から考えるデッキ構築

 将棋ソフト界隈では「評価関数」という言葉が流行っている。それはそれ以外の将棋ソフトの構成は情報処理技術者試験で出るような「配列」による盤面「ゲーム木」を主とした探索アルゴリズム等の汎用的な計算機科学の手法で導き出されており、まず基礎を覚えてから将棋特有の「評価」というところが研究の焦点になるからだ。もちろん、基礎から学ぶではなく誰かの書いたプログラムをごそっとコピーすれば基礎を知らなくても評価関数だけをチューニングして遊べるかもしれない。俺も子供の頃にハドソンのファミコンカセットの「面エディット」でプログラムが分からなくてもゲームの面を作って遊んだ。

 さて、今日の本題はマジックザギャザリングのデッキ構築理論である。自身の戦績はプロツアーマインツ予選ベスト8が最高で、デュエリストが試合中に何を考えているか届かないものは何であるかという問いを抱きながらも、反対にそこまで来られない人をデッキが組めるまで導けるかということも考えた。プログラムをコピーすれば良いようにデッキも丸写しすれば、良型模倣で地方の小さなトーナメントくらいは簡単に優勝できて、それで満足する人もいることだろう。そうではなく、ドラフトで臨機応変にデッキを組む着想とか、定形からは外れた異彩を放つデッキを作るための考え方はどんなものか、書いてしまって読間れてしまったら、それは新しい着想ではなく誰でも分かることになるというパラダイムシフトを抱えた文章になるので少しの躊躇いはあるが、書いてみることとする。

 まず、独創の前に「想像は模倣から始まる」ということで書籍「ディープマジック」は読んでいて、それらの用語とMTGのルールと基礎用語に基本セットのカードと歴代の優勝デッキくらいは前提知識としてあるものとして話を始めることとなる。

 デュエルはカードを繰ってから始めるので「こうする」という手順に落とし込むためにはカジノのディーラー級の器用さがいる。だが、本稿では不器用でも出来るシャッフルでごちゃまぜになるという前提から、それでいて通用する確率論に立脚したマナカーブの話から始める。

 まず、カードにはクリーチャー、インスタント、ソーサリー、アーティファクト、エンチャント等があるが、ゲームの基本をドラフト準拠でクリーチャーを出して殴り合う試合展開から始まるものとして話を進める。

 この時点で勘違いしている人が非常に多いのだが、カウンターポストやネクロディスクなどの四版時代の最強デッキたちはすべてのカードプールから突出した「壊れカード」をコレクションすることから始まっているので、あの頃は同じデッキをコピーして手順を少し覚えるだけでクリーチャーを出して殴っているような人には負ける要素がなかった。

 しかしミラージュブロック、テンペスト等でゲームはスタンダード環境に於いて振り出しに戻り、ウルザズサーガの登場までは混沌とした環境から、誰もがカンポスやネクロの再来を望んでいた。

 1対他の関係を持つ壊れカードが禁止制限されていく中で、何で差がつくかというと1対1の交換におけるマナの損得が基本となる。灰色熊と白騎士、対抗呪文、火葬、恐怖、強要、呆然などは全く違うカードではあるが、灰色熊を対抗呪文でうち消すと、そこでカードの等価交換が行われたこととなる。

 ドラフトからカードを集めるには、まずマナカーブに沿って小さいものが多く含まれながら少量の中量級にゲームエンドカードをカーブに沿って必要枚数ピックする必要がある。

 一番わかりやすいのはエンドカードである。シヴ山のドラゴンやマハモティ・ジンなどの大型飛行クリーチャーが代表的ではあるが「踏み荒らし」が決め手となる展開もある。

 現実にはそういう並べ合ってエンドカードが決まる劇的なデュエルではなく、土地事故を起こして片方が何もできないまま、灰色熊が2匹並んで5、6ターンで決着する寒いデュエルが多数存在する。当面の目標は、そういう寒いデュエル匂いて勝つ側に自分が回ることである。

 このため、対抗呪文や強要は確かにトーナメントシーンでは脅威だが、ドラフト環境下では灰色熊や火葬の方が重要度が高い。そして「恐怖」や「火の玉」は相手のゲームエンドカードであるジンやドラゴンを除去できる上に命が危ない時には灰色熊や鉄爪のオークなどに打ってしまうことも出来る。ここでも、早いターンつまり序盤で脅威となるものと等価交換できるマナの軽さが鍵となる。

 マナカーブは赤単のスライが提唱した早く倒すための理論だが、それに対峙して勝つデッキというのは対抗呪文よりフォーススパイクやマナ漏出のような軽カウンター、ソープロのようなデメリット除去、流砂のような除去が基本となっており、パーマネント全てに通用するとはいえ「砂漠の竜巻」のようなカードをデッキに入れて勝つことは難しいものである。(まあ、それでも砂漠の竜巻も5点評価でいくとマジックの色々のカードの中ではカードをこれから集める人には及第点ではあると思うが。除去だからね)

 そうして、相手の速さに対して勝負になってきてから、カードアドバンテージが取れるかとなってくると「呆然」のようなカードも聞いてくるわけだが、呆然は中量級クリーチャーと同じ扱いで考えると良いと思う。2枚捨てさせるのと中量級クリーチャを熊二体でブロックして倒す、もしくはチャンプブロックを行わせるのと交換として大差ないからだ。


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