万馬券のリスクテイク

 博打の必勝法マーチンゲール法は論理的には正しい。厳密には元手が無限でないと成立しないのが玉に瑕ではあるが、元手が大きくなるほどリスクは小さくなる。

 俺はマーチンゲール法を考え始める以前に競馬予想の実験をするために980円の競馬雑誌を買い、予想を使って100円だけ馬券を買い、そして2800円ほど当たったのだが、競馬場に行く電車賃が往復1120円で、換金すると利益は600円で、次に賭けるのを600円にしようとすると赤字になることに気づいた。つまり家の隣が競馬場で雑誌は必要なく毎日開催されて食費もなんとでもなるならマーチンゲール法が100円から成立するかもしれないが、現実的なギャンブルの開催スケジュールや生活費の都合で、博打に当てられるお金と生活余剰金から経費をさし位引いた額というのは賭博資金として考えて以外と少ないものなのだ。

 反対にゲーム理論ならどうか。ミニマックス法である。それなら、賭けなくていいなら全く賭けないのが最も強いという論理になる。賭けなければならない局面をミニマックスで凌ぐだけの話なのである。それでも、買わないことには当たらない、というのが正論で、博打に明け暮れているとしたら、賭けないで何をしたらいいか。仕事をして休みは金を使わずひたすら退屈する。そういう境遇の人に泡沫の夢を与えるために賭博場はあるのだろう。つまりミニマックス法では本末転倒なのである。

 これは今日のMTG研究で計算で完成させたデッキがあまりにもつまらないことで思い出した。俺はマーチンゲール法ミニマックス法で大きなトーナメントで高額賞金を狙うのではなく、地域のゲームショップで景品を3000円分ちびちびと取る作戦に出て、そのお店が閉店して、もう少し遠くまで取りに行かないと店がないという状況になった。そこでいちどゲームから離れ、家でプレステで格闘ゲームの研究や幾多のゲームソフトで暇を潰してきた。

 そんな折に思いついた新しいデッキはギャンブル要素の高い着想だった。ギャンブル要素があるから人は熱くなるのだろう。デッキを研究して、ギャンブル要素が減ると退屈だし、その上でトーナメントに出て競い合うとなると、残るのは申し込む、現地に行く、カードを買うなどの仕事の数々で、賞金総額と必要資金を考えるとその前に他のお金の使い道はないかと考え直してしまう。カードの組み合わせからギャンブル要素を取り除いても、シャッフルと対戦相手の動向という読み切れないものが残ってくるからだ。

 また、MTGの大会にマーチンゲール法が使えるのは地域のショップから大型トーナメントに挑むまでで、大型トーナメントまで掛け金を増やしてもし負けても倍掛けすることも出来ない。カジノのすごいところはラスベガスなら相当な額を掛け金としてベットできることで、それでマーチンゲールを成立させるとすると、そういう人のためのカジノがラスベガスだろう。

 とりあえず、最近の最も手軽な賭けはマクドナルドのハッピーセットの抽選であるが、いちど狙いを外して、次は二個買ったら当たるかなというところで、親父が店員にごねて「違うのにしてくれ」と言ったらムーミントロールのコップスタンドが渡された。開封してハズレだと思ったカップとスタンドを組み合わせると、案外と可愛いものになった。

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 マーチンゲール法のコツはその理論に忠実に勝てば賭け金を元に戻すこと。最初の賭け金を低く設定することで倍々にした時にどこまで自分が払えるかの実費と論理値が近くなる。倍々ではなくゲームでも計算を変えれば使えるので、そんなことを考えると、ストリートファイターも新しい賭け方があるんじゃないかと思う。ただ、新しい賭け方を発明する機械として道具のように利用されているという軽い被害者意識はあるよな。付き合わなかったら良いんだが。


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