遊戯王の四要素「当てもん、トランプ、チェス、マンガ」

 遊戯王のマンガに登場するカードが実物として市販されて25年くらいになる。マジックザギャザリングの販売開始から遊戯王の連載までは5年ほどだったと記憶しているが、遊戯王のマンガが描かれた時点でMTGのレアカードは最高で13万円の値がついていた。

 そして昨今ヤフオク遊戯王の初版レアが7,000,000万円で売り出されるという俺から見たらイタズラがまかり通っていた。何故イタズラかというと、そもそも150円のパックが1ダースほど入った箱に1枚必ず封入されているので定価で他のカードも込みで全部買って3300円。そしてマイナで希少価値があるわけではなく、週刊ジャンプの宣伝力でMTGの1000倍くらい印刷されているので、希少価値の方も1000分の1程度だと見込まれる。また、いくら商法で古物が買い取り価格に関係なく売価を幾らにしても良いとしても、あまりに悪徳だ。

 その出品は気付いたら無くなっていて本当に誰かが買ったか出品者が取り下げたかはともかく、その波及効果で3000円から6000円ほどの他のブルーアイズホワイトドラゴンが軒並み売り切れて、そしてオークションで19,800円ほどまでに値上げされたところで10枚で1円からと言う出品が現れ始めた。10枚で1円だったら買おうかなと思ったのでブログ記事にするのは悩んだが、MTGに飽きたというかレアカードのあまりの高騰に付いていけず、遊戯王なら当時ブルーアイズの重版が600円くらいだったので、これを買って遊んでみようかと考え、そして実は市中に遊戯王で本当に遊んでいる子供などひとりもいないことを知り、捨てた。

 ガラケーの時に月額315円(当時の消費税が5%)でケータイでカードリストからデッキを組み、絵柄のないカードの四角いドット絵と文字で深夜に15人リーグで自動デュエルをさせて翌朝に結果がケータイに届き、また夜までにデッキを組み替えると言うコナミネットのサービスがあって毎日の楽しみだったが、リーグを上り続けてレベル20でリーグ3位というところでサービスが終了してしまった。

 好奇心というか求道心というか、今でももっと上のリーグは実在しただろうかとか、そこではどんなデュエルが、どんなデッキがと心の内で問い続けている。

 そこで考えてみたことが、コンピュータ将棋を自分で作ってみたように遊戯王も自分で作れば基礎理論から分かって、将棋に対する好奇心とか野心に折り合いが付いたように、遊戯王についてもスッキリするのではないかと。

 それで近頃は遊戯王の面白さは何かと自問自答するのだが、本質とか核になるものがあるとして、当てもんのパックに無数のハズレを用意して、それによって本質が滅多なことで掻き分けられないように隠匿し続ける仕組みこそが遊戯王を始めとするトレカの文化であり、そしてそれらのハズレにも絵柄と効果がちゃんと割り振られていて、誰に勝つでなく「どんなバカが考えたらこんなハズレカードばかり作るのだろう」という会社や製作者に対する優越感を子供ながらに持つということが、文筆業の「読んで下らないと切り捨てさせて本代を儲ける」というやり方を分筆からカードにそのまま当てはめた本質というより外堀なのだろう。

 その意味では、強いカードを刷り続けたらインフレが起こるので、最初のお客さんを大事にして弱いカードを刷り続けた結果が相対的に初版のブルーアイズホワイトドラゴンの高騰の火種であり、その財源は後続のハズレカードの売り上げであろう。

 もしブルーアイズホワイトドラゴンが何らかの事情で負かされたら、それらを禁止カードにしてゆく。ブルーアイズ自体は効果を持たない3000/2500のレベル8モンスターで、初版ルールでは普通に最強だったが、レベル4ルールでいちどゴミ屑のようになり、しかし死者蘇生で拾ってくるなどのコンボで復権し、そのバランスを壊すことなく25年間も運用されたのだ。

 遊戯王から当てもんとマンガを取っ払うと、4*5くらいのチェスとトランプが残る。それらはつまり5枚の手札をお互いにチェスボードに伏せたとすると6*5くらいのチェスで、動きはカードに記述されているから、実装には無数のデータベースが必要となる。遊戯王でも1万種類くらいあるとしたら、それは語彙力でも画集でも何でも、それ相応に人の心を形作るものとなるのだろう。

 色々なゲームで遊んできて、古今東西の「もっと面白いゲーム」を求める内に遊戯王にも手を出したけど、近頃は面白いと人が言うものを自分で試して落胆するのに慣れてきた。それがゲームクリエイターを仕事にしようと志したことから比べると、職務怠慢だとは思う。


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