無理が祟って風邪を引いたのだが

 徹夜からの睡眠不足による体調不良をビタミン錠剤で治そうとして眠りにつき、起きたら風邪を引いていた。熱はないが鼻風邪で、子供の頃は病弱で年の半分くらい風邪だったイメージがある。風邪をひくと親父は「そんなもん根性が足りん油断しているんや」と怒られたものだが、お母さんと爺ちゃん婆ちゃんは家で布団で寝ている俺に優しくしてくれた。

 人生の意味というと意とともに味があるわけで、元気に小学校に行って周りから陰湿ないじめにあうより家で病気で寝ていた方が味がよかったとも思い出す。

 だいたい、地域は駅が近く病院が多く町は病人に優しいのだが、会社勤めになってから病気で休むという俺の習慣と言ってもいいものが否定されだした。その当時の部長さんが営業上がりで、本人がしょっちゅうズル休みをするタイプで部下が休むとズルじゃないのかとイライラする。家にいると親が電話に出てくれて、しかしプログラマという仕事が理解されておらず、会社から家に電話がかかると「何の仕事なんですか?どうして風邪でも休めないんですか?何の会社ですか?工場ですか?」と質問攻めでそれで何とかなっていたが、一人暮らしになってからマンションで風邪で寝ていたら営業の人が部屋まで訪問に来るなどして、結局俺の体調より納期といって「いついつまでに出来ます」という約束が、今思えばそんなに厳しく守らなくても回るものだけど、契約社員という形態上の問題で、納期を守らないことが解雇理由になりうるから、ひどく怖がって漫画家の締め切りのごとく根を詰めて守っていた。

 そうすると、周りの人で納期を守れない人が相対的に「出来ない」とされるのを怖がって、どんどん無理な納期を迫られて、それで俺が出来なくて離職したらあいつら的には一件落着なのだろうが、頑張れば頑張るほどいじめられて、結局三年目で本当は三年雇うと正社員登用しなくてはならないのを当時は知らず、どこに相談して良いかも分からないまま雇い止めとなった。

 そもそも、正社員という言葉も法的解釈が期間の定めのない従業員のことか、株主の旧称が「社員」というのとブッキングしたままで現行の労使関係がある。社員である株主と労働者であったものが、アルバイトやパートタイマーという労働形態の登場で従業員の中に正社員という言葉が生まれ、それは本当は働かないで儲かっている株主を隠匿するもので、そしてプログラマという新しい職業は派遣社員契約社員の期間の定めのある従業員という法的にも新しい労使関係で雇われるようになった。

 期間の定めのある従業員を雇っているのは社長なので、本来仕事を頼む時は労使関係で直接頼む内容を契約書に定めるべきだが、面倒なのでなあなあで雇って役職のある従業員が仕事を頼むという違法行為がまかり通っている。雇い止めの恐ろしさから、言うことを聞くしかないと思って生きてきた。

 それが優しい弁護士さんと出会い、会社相手に裁判をして、社会保障を勝ち取ったので少ないながらも毎月の収入がある今の暮らしに落ち着けたのだ。

 それで元気だとあの人なんで働いていないのにお金持ってんのとなりがちだが、今無事に病気になっている。もともと病弱で、フルタイムの労働は体に合わないのだ。休めるようになって病状は良くなり、四十代は人生で初めてと言ってもいい健康な病人生活だったが、やっぱり何かしなきゃと焦ると病気になってしまう。精神ではなく体の方も。

 風邪は辛いが、こうしてブログを書くことで誰かに分かってもらえれば辛味は軽くなる。


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