楽器が出来なくても作曲ができるDTMのパラドックス

 「パソコン作曲」という言葉があるのかどうかは知らないが、作曲家がお金持ちでパソコンを持っていたというのは昔からあることで、そして作曲したものを譜面にして演奏するのをパソコンですると音源が出来て、売りもののレコードの種になったというのもあるだろう。

 時代はスマホだが、それ以前にパソコンの低価格化の時代があり、パソコンはお金持ちのものではなく普通に誰でも持っているものである。それで作曲ができるというと夢のような話。

 パソコン作曲はDTMに名前を変えて、様々なソフトが市販されている。

 けどちょっと待て。楽譜も読めないで楽器もできないのがパソコンを使うと作曲できるというのは如何なものか。確かにDTMには楽器はいらない。しかし、音源を打ち込むソフトは皆楽譜かまたはピアノロールと言って鍵盤楽器を横に倒したようなインタフェイスになっている。

 まあ、俺がした最初のDTMというと、ドラムシークエンスの打ち込みのループにベースフレーズを乗っけたものだ。DTM雑誌を何ヶ月か取り、さっぱり分からない俺に画面写真付きで与えられたものだ。それは既に1小節から2小説打ち込まれたものを何小説分も繰り返し、引き伸ばしただけに過ぎない。だってドラムを同じリズムで叩くのも同じことじゃないか!

 これでは作曲が出来たとは言い難い。また、ギターを弾くのも既存のコード進行を覚えてその範囲でメロディを少し変えるだけの話である。それでもミスチル的とかバックナンバー的なものは出来た気分になるのだが、作曲したという実感は乏しい。同じような曲だから。

 しかし、そんな俺でもボカロ曲のバックトラックを作っているうちに、ボカロ曲それ自体のVOCALOID MIDIは作曲していると思えるようになってきた。

 さらに今日は既存のアレンジを当てはめるだけでは飽き足りず、バックトラックにキーボードやコーラスを後付けて当てるように、フレーズをMIDIで打ち込んで、それをDAWに読み込んで元の曲に重ねるところまで来たのである。

 最初から聴いていた人はごくわずかで、何度も何度も同じようなフレーズを1小説にまとまるように繰り返して聞かされたわけだ。そして出来た時には「おお、入った入った」「良いね」

 しかしその数分後、出来上がった曲を聴いていたところを誰かが通り過ぎ

 「あんたペテン師や!」

 「???なんでペテン師なんだろう?」

 「最初から入ったってんやろ!」

 打ち込んだ意味とは。


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