風邪は治ったようだが

 不調の原因をひとつずつ潰していくと、風邪は治った。先の記事からサッポロポテトを袋の半分くらい食べて、PS2でカプエス2をしていると4面で便意が来て、ポーズをかけて電源を切り、用を済ませたあと、気を取り直してもう1回。ボスのゴッドルガールをあと大攻撃1発という所で負けてコンティニュー1回でクリア。

 気になっているのが東京の皮膚科医TKOさんである。カプエス2ではなく、俺が以前にやりこんで「もうこれ以上は無い」と思って辞めたヴァンパイアハンターというゲームで新宿の大会を10回優勝したらしい。残っているはずのメンツは昔やりこんだ仲なので、彼らが弱ったという可能性も無いわけではないが、俺らがやりこんだことを後から始めたドクターが抜いたという知らせである。

 それはさておき、俺の病理も少し分かってきた。多くの人は夢を持って生きているが、俺の夢はコンピュータゲームである。プログラマーになって作ることで夢が叶うと思っていた節はあるが、そうではなく、俺はドラクエを遊んで鳥山明のイラストや話の文字列から、どこか内向的に世界を作ってきた。ありていにいうと、ドラクエIIサマルトリアの王子からドラクエIIIの勇者みたいな剣も魔法も使えて仲間に恵まれる存在になって、旅して強敵を打倒したいのである。

 母親はそれをきびだんごでお供を連れて鬼退治に行く桃太郎になぞらえ、別居の寂しさからチャウチャウを飼い、俺の服に似せた犬用のパーカーを着せた犬を「桃太郎」と名付け、家に招いた俺に手料理を出して、その余りを「ももちゃーん」と犬に食わせる。何を考えているか分からないところがあり、無性に腹が立つ。それはそのまま。

 あとは駄菓子屋のおばあちゃん。おばあちゃんなんて可愛いものではないが、子供のころから通っていたので、俺のカンに触る言葉など良く分かっており、店でゲームをして不良仲間とつるんでいたときは黙っていたが、誰も来なくなってから誰か来ていないかと尋ねた俺に嫌味や小言でやたら癇に障ることを言い、そして俺はいかなくなり、それで事が済んだと思うと街に新しい小売店など出来るとその店番の町娘が駄菓子屋のババアから習ったのか、ぼそっとひとこと通りすがりに言ってきたりする。

 これは精神病院に行くと、幻聴と言って無いはずの声が聞こえる精神病だと解釈され、そういう側面も確かにあり、服薬で緩和されたが、限界に近い薬量でも治らないのを俺が「誰かが言っている」として、通りすがりにボソッと言ったと確信した相手を殴って警察を呼ばれ、事情を説明したがおまわりさんが「くちではなんぼ言ってもいいが手を出すんはアカン」の一点張りだった。

 ちょっと脱線したので、ドラクエの話に戻り、勇者になりたい俺にとっての勇者とは何かということを書き足しておくと、ドラクエ以前にウィザードリィというゲームが3Dの迷路とテキストで戦闘や職業のパラメータシステムがドラクエの原型になったと言われる洋物ゲームなのだが、それでまず僧侶でレベルを上げて魔法を覚えて転職すると、魔法の使える戦士みたいなのが作れて、僧侶の魔法も魔法使いの魔法も盗賊の縄抜けも使えるスーパー忍者というのを作って遊んでいたら、どうやらそのゲームをした多くのものが同じ遊び方をしているということで、ドラクエIIIの勇者はレベルを上げていくと剣技も攻撃魔法も守備魔法も使えるスーパー戦士に育っていく設定となった。

 呪文の中にはモンスターを眠らせるカティノから火を起こすハリトに傷を癒すディアルなどがあるのだが、ドラクエの勇者も適度にというか戦士に劣らない剣技に火を起こすメラや上位のベギラマ、傷を癒すホイミに上位のベホイミ、それに適度な補助魔法に勇者専用の稲妻を呼ぶライデインなども使える。ヴァンパイアハンターDを赤くしたようなFFの赤魔導士も似たようなキャラである。

 しかし、それを目指したはいいが俺は中途半端な存在で別に剣道をするわけでもなく、学業もそこそこに、これといった特技も無い。ゲーム大会で優勝したことがある、国家試験に通っている、ギターとピアノがちょっと弾ける、でも勇者ではない。

 スーパー忍者とか勇者って、もっと何というかレベルを上げたらひとりで物語を完結させられるくらいの存在なのだが、かといって一人で良いかというと旅の仲間は欲しい。

 だけど、それは子供向けのお話の中の世界。ドラクエも次々と新作が出るので、また買って最初から物語を楽しめばそれで満足できるかもしれない。ただ、職業としてゲームプログラマーを目指して、35歳で開発の仕事に付き友達に新作を買って欲しいと嘆願して売り上げに貢献して、新作のネットゲームで一緒に遊んでいると「アイツ作った奴らしいで」と裏で噂を流され、といっても大企業で流れ作業化したゲーム会社でプログラムの一端を担っただけであり、アルファロムというひな型を作っただけで「それ以上のシナリオなどは守秘のため本社勤務の一部の人しか知らない」という状態なんだと弁明しても「作った奴が勝つなんて!」と虚構新聞などのファンメディアでスコボコにほのめかされて「あいつだあいつだ!」とファンが起こっていじめて締め出された。

 それでも超人気タイトルなので、噂も知らない俺と遊んでくれる人もいくらでもいるのだが、知っている人間から恐らく裏切られているという感覚は人間不信に陥るに十分で、それと幻聴との関係性をずっと気にしていて、最近までスーパーに買い物に行くのも怖かった。

 ところが先日、また歩いていると「ようちえんかよっ!」と声が聞こえて、怖いと思っていたら、店の中がシンと静かになって、全員でモールの中で新しめの文具売り場に立っているふくよかなおさげの女を全員の視線で見ていて「ああ、あいつなんだろうな」と思ったところで、腹が立って思いっきり睨んでから、普通に食料品を買って帰った。

 たぶん、以前よりは健康になったと思う。まだ薬は飲んでるし、幻聴にさいなまれることはある。今日は精神病ではなく朝に風邪気味だったが、早めの対処で良くなった。


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