リスペクトが舐めプに変わってしまった

 高校の時「ゲーム業界就職読本」という本を同級生が手渡してくれた。

 進学校で、将来はお医者さんとか銀行マンとか位の高い仕事を目指すものも多く「ゲーム業界なんてこんなものだから君もゲームを作るなんて趣味にとどめ勉強するべきだ」ということで読めということだったのだが、読書量が少ないというかゲーム雑誌ばかり読んでいた俺には雑誌で刷り込まれたゲーム業界へのリスペクトつまり日本語で言うと尊敬の念がすごくあったので、雑誌社ごときがゲーム開発者をなめやがってとその本を隅々まで睨むように読み「なに真剣に読んでんの?」と笑われた。

 まあ、いまにして思うと当時のゲーム業界は文筆をする出版業界より下に見られており、漫画家が編集さんに頭が上がらないようにゲームの売り上げも雑誌のひと筆で決まる程度に見下されていたんだと思う。

 それはさておき、35歳でゲーム開発会社を短いながら経験して、そこでも広くコンピュータ業界を取って「役職についている人が何でゲームなの?」「それにアンタ全然ゲーム詳しくないよ」ってことも言われたけど、制作チームでも何人もいる中でチーム内では下の役職に甘んじているプログラマーに職人的なカッコよさを感じて、自分のが年も上だし複雑な心境のまま退職してしまった。

 そうだから、というわけではないが、それと同時並行的に32歳からギターを弾けるようになりたいと言い出して、もう13年目なわけでそれなりに音楽知識も付き、最近昔のファミコンのゲームのBGMをピアノでどんどん弾けるようになって来ている。

 そうすると、このまま打ち込めば昔よくあったゲーム音楽MIDIホームページみたいなの楽勝で作れるんじゃないかって思い始めた。

 これが、業界ではといっても音楽業界かゲーム業界か何業界か知らないが、広くクリエーター業界で上手くなったひとが誰かが一生懸命作ったものを舐めプで演奏するというのがいちばんやってはいけないこと。

 まあ、人間関係でも分かるんです。子供と大人がいたときに大人は子供の手本たるべきで、そういう風に舐めずに真摯に向き合って礼儀を教える。でも、旧貴族のうちの家ではビスケットのことを箕山町でいただいたものというのが良く分からず「みのこっこ」と言ったのを親や叔母さんが笑って、45歳でもまだ言う。そんな育ちなんです。

 ただ、俺も45歳というなら何なら18歳からでも、分別があるなら親の仕業でそう育ったことでも自分がクッションになって、自分の代であらためることは出来る。

 その仕事は結構つらい板挟みなんですけど、一緒に住んでいる親父との関係は親子というのは変わらないものの、お互いの不満を和らげたり仕事を分担するという普通の家族では当たり前のことが、ようやくちょっとずつ出来るようになって来ているところです。

 猿真似でからかうのではなく、一枚上手を見せる聴かせる。そんな仕事は俺に本当に出来るかなとまだ不安はありますが、出来るようになったことを喜んでもらえる年はもう過ぎたので。大好きだったゲームの曲を自分で演奏できたのは本当にうれしくて、幼い時から楽譜になっていたりピアノを習ったり向き合ったりしていたらようちえんとか小学校でも出来ることなのかもだけど、いまその喜びを噛みしめている45歳です。


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