鉄拳5をやりこむ問題の本質が見えてきた

 鉄拳王になりたくて鉄拳をしているわけではない。

 鉄拳をやめたくて、その言い訳に「鉄拳王を取ったから」が欲しいのだ。

 最近、鉄拳5も面白いなと思うようになった。またやろうと思えるのだ。

 鉄拳王を取ったら楽になれると思っていた時は鉄拳王への最短距離を考えた。これはドラクエの遊び方として、早解きのタイムアタックに近い。ドラクエの人気は忙しくなく、モンスターが出てきてもじっくり考えてコマンドを選べるところにあると思う。そしてお城や町には世界観を楽しむための無駄な会話がある。まあ「ここはリムルダールよ」という会話をするとルーラのフラグが付く、みたいな条件解除のフラグ取りという側面もあるのだが、早解きは発売日に買って競争するという意味では遊べる時間の長いやつが有利で、早く解いたのではなく多く時間をかけて解いているのだ。実質的に。

 そこを地図や人物に敵キャラクターを知り尽くして、開始から何時間何分でといたというようなレースに転化して遊ぶことが出来る。これはドラクエの好きな人の遊び方のひとつでその競争自体には競争をすることで時間を縮めるテクニックの交換会などの交流が生まれたというような有意性があった。

 鉄拳もシリーズ当初から好きな人は勝敗とかではなく、キングの投げコンボを全部決めて遊ぶみたいな全技出しの遊び方をしているかと思う。それに対して、俺は初代プレステを持たずにサターンでバーチャファイターをしていて、優劣というか高校の漫研がサターン派とプレステ派に分かれ、それでもプレステ派とゲーセンで戦う上でルールが違うと対戦できないので敢えて有利なバーチャではなく不利な鉄拳を飲んだのだ。

 不利を飲ませれば勝てると甘く考えていると思った俺は、まくることを考えた。

 しかし、論理的には勝負ならば不利を飲ませるのは得策なのである。

 その意味で、俺は新発売の鉄拳5を家庭用で買って、鉄拳王に逃げ切ってやめて「もっとやれば勝てるのに」と悔しがらせて逃げることが出来ないかと考えた。

 いい加減、アイツらの相手は嫌だと思っていたのかもしれない。

 まだ本当の意味で友達付き合いが成立していないのではないかと思う。最短距離を求めるのではなく、ドラクエIIIで自分たちより強いモンスターがいるわけでも無いのにレベルを99まで上げて楽勝を楽しむとか、ダーマの神殿で呪文を全部使える戦士を作るとか、そういう遊びをどこかで「無駄」と割り切って生き急いできた。

 そうすると鉄拳でも勝ち負け以上の「無駄な遊び」の地図はなかなか広範になっていて、その中で俺は「先に鉄拳王を取る」というルールを勝手に自分で設定して「俺が勝ったぞ」と言って、相手がそれを飲む飲まない以前に鉄拳2の話をしているだけだったということだと思うんだ。

 鉄拳のプレステ版はロード中にギャラガを遊べたらしいが、鉄拳5はロード中にプレステのスターブレードが遊べて、そのハイスコアを33400点に更新した。

 鉄拳で遊ぶ中に高段位を賭けて対戦するというひとつのレギュレーションがあって、その遊び方に対する共感はまだ得られていないんだと思う。ゲーセンでのマッチングだと級段位者同士で戦ってピラミッドを作るわけで、共感も何も勝ち組負け組に分かれてしまうけど、PS2だったらプログラムの中に負け役のコンピュータのデータがあるわけでそれを負かせば誰でも鉄拳王のチャンスはあるのだ。簡単とは言わないものの、数の問題で実数的に負けてくれる人の数が多くならないと成立しない段位ルールではなく、PS2とソフトとメモリーカードがあればひとりでも取れるのである。

 ゲーセンで大枚をはたいて集めた客を負かして実際の(語弊はあるが)鉄拳王となったものからしたら、PS2で取られてしまったら商売あがったりなわけで不服が申し立てられるのは分からなくはないが、分かるとカネを払ってゲーセンでということで、バーチャファイター4はゲーセンで三段まで、カードがリセットされたバーチャ5では初段で既に同段戦の相手すらいなくなっていた。XBOX360で天帝まで上げた。

 そうすると、まあ「段位戦の盛んな都会のゲーセンに来い」というのもひとつではあるが、対して生活圏とお金の問題で不利なその挑戦は受けられない。奈良から大阪や京都のゲーセンに払いに行く金は無いのである。町内会で町内にゲーセンを作るなんて話は出るわけも無く、あるとしたら三条のゲーセンで対戦するくらい。

 遊び人の仲間としてはカネ払いがケチになってつまらなくなったんだと思う。それはそのまま対戦ゲームでも、金づるとして誘っても勝たしてくれないからつまらなくなって、誘われなくなったとも思う。取り上げにまで行く気はないから、付き合いって何だろうと思うと、家庭用ゲーム機で暇ゲーする輪があって、そこに鉄拳を混ぜるとどうなるかというところ。

 やっぱコマンドを選ぶ間待ってくれてダラダラでもゆっくりでも同じことをして遊べるゲームではなく忙しい展開で勝ったら増えて負けたら減るルールが特に負けたら減るの部分でユーザーの納得感は比較的に理解されにくいと思う。

 「なんでわざわざそんなことを」は自分でも時々内省的に考えるんだよなぁ。


🄫1999-2023 id:karmen