今日の病院と薬局

 権力と言うと政治家をイメージするけど国民皆保険制度下のお医者さんは権力者だし薬剤師さんもお医者さんの補佐として薬事法に守られて非売品のお薬を独占販売している側面がある。つまり調剤薬局と言っても薬局の中での調剤は分包くらいのことで、お薬は製薬会社で作られたものを仕入れて売っている商人のような仕事もしていてそれが一般の小売業より安定高収入で目指す人も多い。

 薬局のお姉さんは案外と権力者なのである。

 善悪で咎める気も無いが、病気を治すとか人を救う大義を持って医師や薬剤師を志す人もいれば儲かる仕事だからする人もいて、どんな動機であれ病気を治してもらえたら問題はない。

 問題は俺の病気が不治の病でもう15年くらい通院しているが、その間に主治医は5回変わり来月には6人目のお医者さんが来るらしい。入院していた時にいちど廊下で院長先生とあいさつしたが、偉い院長さんがいて大学を出た研修医さんが下っ端として問診に駆り出され、何年かお勤めを過ぎると大学に帰って行ったりするらしい。

 事務員さんとか薬剤師さんや看護婦さんはその意味では長く病院や薬局に勤めていて、お医者さんが変わっても体重と血圧を測って注射器で採血してもらって、それから問診があって(ここだけお医者さん)お会計も似たような顔ぶれで回っている。

 それから薬局に行ってお薬をもらう。問診が終わった順に薬局に移動して番号札をもらって順番を待つのだが、たまに薬局の外でタバコを吸うなどして順番に不在だった患者さんを薬剤師のお姉さんが呼びに行くことがある。これは元来サービスである。

 しかしまあ、その前に病院の看護婦さんにしても検査のあるなしも人によるし、体重を測るときに立ち話でもしようものなら外でやきもきしているお爺ちゃんとかがいて、看護婦さんも歩き回ってひとりの患者さんと長話をしないように大変そうである。

 それを踏まえて、薬局の外で待っていると薬剤師さんが呼びに来てくれるのがたまたまでありサービスであるのかというと、常習犯みたいに薬局の中がすいていても外で待つちょい不良オヤジみたいのがいて「やれやれだぜ」と思っていたのだが、最近ではもうちょっと若い不良で病院に彼女を連れてきているのか彼女の方が病気なのか知らないが、薬局の外で彼女と立ち話していてさらに薬剤師さんに外まで呼んでもらう輩が現れた。

 それで俺は薬局のソファが埋まっていて組み立て椅子しか余っていなかったので、外のベンチで待ってみることにした。そうすると、後の順番の黒服のおっさんも番号札を取ってきて外のベンチの隣で座り、俺から後の順番の人はバス停とか、自販機とかで全員外で待ち始めた。

 中で待っていた人が全部はけると薬局はガラガラとなり、バス停からおばちゃんがひとり薬局の椅子に帰った。それから薬剤師さんがひとり件のちょい不良の元に駆け寄っていくのだが、何か手筈が違うようで、俺の元に「お薬出来ていますんで」と来て、俺はお薬をもらって外に出たのだが、黒服のおっさんなどは多分薬をもらっていないのにバスに乗ってどこかへ行ってしまった。

 あとは病院の自販機がサントリーでボスの絵柄が毎月変わるのと、ミルクティーがいつのまにか180円に値上がっていること、薬局の自販機はダイドーなのであるが今日はそこがおばちゃんに占拠されていたことなど、ちょっとしたことを気にするくらい暇なのであった。

 来月はまた新しいお医者さんが来る。初めてのお医者さんの時は自分のことを分かってもらわないとと思って取り留めも無く色々な話をしていたが、先生が変わるのだということを知ってからはカウンセリングと言っても世間話と言うか、なかなか心の内を話すということはしていない気がする。

 その意味では長いこと勤めている看護婦さんや事務員さんに薬剤師さんを見ると安心するのだが、それでも病気のことはお医者さんが担当なので、次のお医者さんには頑張って話をしないとなぁ、と思うのであった。


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