荒唐無稽

 俺がゲームをする信念は全国一位を取ることだが、全国一位の絶対指標であった雑誌のハイスコアがウソスコアだったということを受け入れてしまうと自分が何に立脚しているか分からなくなる。井の中の蛙のように自分の身の回りに自分よりスコアの高い人がいないから自分が最高位であるとしてしまうことも出来るが、これが中二頃のウメハラと出会う前の19の頃の心境に近い。いないから求めて探したら目の前に現れたのだ。

 今から考えたら、作ってしまったのだろうとすることも出来るが、誰が何のためにという明確な理由がないので、これも足場のある考え方にはなりづらい。ただ、俺はゲーム機を買い持っているのにゲーセンに行きゲーム業界のこの上ない上客であったことは疑う余地がない。それが種々のゲームを飽きて対戦型で強い相手を人間で求めているとかハイスコアに取り組んで競う相手を探しているものだから、もしそれで上回ればまたゲーセンに100円玉を入れ始めるのだとするとヤクザが何としてでもそうしてまた100円を手に入れる状態に持っていこうとした、という妄想をすることもある。陰謀論だ。

 このサイクルで再び入れ始めた100円玉は俺がユニオンシステムという大企業に就職することでゲーセンよりもパチンコ級のインカムをゲームセンターにもたらした。そのひとつの終着点はカプコン社の2D格闘ゲームの開発中止の報であった。

 それでも古くなったゲーム代を辞めない俺に3Dとなったがゲーム性は2DのままというストリートファイターIVの発売の知らせが来るのだが、これにもそれほど惹かれなかった。最初は義務的にやろうとしたが、それで勝っても負けてもストIIほどの感情は湧き起こらなかったからだ。

 これを止めたのはソフトハウスという上位職から地元奈良の工場に職場が変わったときの喫煙所での工員と思われるオッサンとの会話である。俺はソフトという上位職だが、ソフトが良くなって機械がアップグレードされると言っても部品調達から組み立てと工程は色々あって、もう予約が数十代とか百台とか入って開発というのも待って欲しいという話が来ていたらしい、開発の仕事は給料が高くてもっと金を欲して夢中になっているのは分かるのだが、それを何に使っているのかということが調査されて、どうやらゲーセンにジャラジャラ入れていて、そこをせき止めれば労働組合の定めるところの給料で十分まかなえるのではないかという話なのだった。

 それでもらえる額が少し安くなり、意欲を失った俺だったが、喫煙所のおっさんのすすめて自宅でゲーム機でゲームをするようになって、今も続くこの生活が始まった。

 ひとりでしているのでスコアになってその基準が雑誌。昨今では新しいゲーム機でネットに直接動画形式でアップロードする機能があるようで、買い替えないかという話は分かるのだが、工場勤務時代に出たXBOX360でも進化は袋小路に感じていた。

 スコアを辞めると安易な基準値として現金という数字にも長いこと囚われた。だが、今は化学の勉強をしている。俺は在学中に化学を荒唐無稽な学問だと思っていた。見えないものを取り扱い、体積は容積で測るわけで、物理学なら分かるのだが、化学実験はピタッと合うこともなく、再現性すら疑問視していた。

 だが、政府の定める通貨の所持量を示すお金とか、プログラミングされた数値の累積点であるゲームスコアなどよりは、もうちょっと科学的な数値根拠を持たないとよりどころが無くなった感じがして、とりあえず的に今は化学を学んでいる。

 俺の考えが偉い学者さんから荒唐無稽であるという批判を受けるのも分かるのだが、ではその批判をしている学者さんにはどれほどの自信になる根拠の数字があるのか。

 こっちの話はだいぶ聞いてもらえたと思うので、話を合わせるために理科実験から出てきた様々の科目をこちらも修めて臨むべきであろうというところが最近の話。


🄫1999-2023 id:karmen