まあコンピュータの専門学校しか出ていない俺ではあるが、高校の後輩が文系私学でやりたいことが見つからない系の話をしたときに「したくないことをしないのが幸福の定義である」ということを尤もらしく語っていた。
かなり前の事なので、いまさら引っ張り出されてもと本人は思うかもだが、この言葉は俺に結構深く刺さった。だが、その深く刺さった矢がソロっと抜けてまあ聞いてやろうという姿勢を持ったことも間違いだったなと。高校偉いという事で木登りして語っていた俺が大学ダメだったからもう話しちゃだめよと言われ、私学でも大学と名の付くところに通っている後輩君の話でも聞いてみようと、この時点でプライド捨ててる。
反骨精神みたいなものも高校の頃から持ち合わせ、大学に行く意味すら自分で分かっていなかった。そりゃ高校生だから大学ってどんな所ってそもそも分かっていなかったし、世間での風評くらいしか周りの大人も気にしていない様子だった。
眉唾物の話になって恐縮だが、専門卒の俺でも医学的に脳内に麻薬物質が出たら幸福を感じることくらいは知っている。実験したわけではないが。対して「したくないことをしないのが幸福」というのも、我慢や辛抱が不幸であるとすると、プラスの振れ幅を求めて行動することで喜びを得る(麻薬物質が出る)のが幸福だと思って人はいらない辛抱を堪えていて、それすらやめちゃってしたくない事をしないほうが幸福だと。
これ、哲学なのか科学なのかというよりも、波打つ人間の感性をどこで幸福と捉えるかというトートロジーにはなるが、そう哲学観なのよな。哲学は哲学ではあるが、科学の目で見ても、幸福物質が出て喜ぶのが幸福と言ってもそれは食事くらいで良く、それ以上の幸福は元来食事を求めるときに出来た本能のようなものであって、スポーツなどでそれを疑似的に体験できても、幸福になる前段階は辛いわけだし、疲れるし、それならしたくない事をしないでじっとしているのと比べて波打って高い位置の幸福を得て喜ぶのと、別に今より高いところを求めずじっとしているのでどちらが幸福かというような、単純比較の難しいけど、数学的には総量とかが一元比較の出口になるので、最大値を取るか平均を取るかみたいな切り口で答えの変わる比較だとは今更に思う。
やっぱ文系私学とはいえ大学は大学で一考の余地のあることを語ってくれているのかもな。悪かった後輩君、そして俺自身にも。まあ俺もいつまでも専門卒だからと卑下するのはみっともないしやめよう。親戚にはインチキだと貶されているが、コンピュータ将棋の開発者として電通大の大会に参加させてもらったわけだしな。
まあ格闘ゲームとか、普通のテレビゲームとか、そういうのが疲れて双六ばっかりしたこともあるし、コンピュータ将棋なら進路選択前とそこそこに元さやであるわけだし。そして昨今、その趣味のゲームすら「やりたくないなぁ」と思う時に、どうにか自分の背中を押してやる時もあれば「したくない事をしないのが幸福」という一本の矢の痛みが疼いて、いまテレビで野球見て野球選手になりたいとは言ったものの中学校の運動部でもトレーニングへばって辞めたことなども思い出したりするのよな。試合なかなかさせてもらえなくて掃除とトレーニングがつまらなかった。
したくないことをしない幸福を得ながらも、麻薬物質が出ていないから実感は無い。かといって他の境遇に変わろうかというと、今のままでいいやと思っていることは、自分で考え得る限り最善の選択が今の行動だと思っているのだろう。
三手読みのコンピュータ将棋同士が千日手になっていて、理屈が分かっているものからしたらもっと深く読めとか決着つくまでやれとか野次やら何やら飛びそうなところで、本体としては自分の決められたMAXまで読んでいて、その最大が最大であることを認知しているのは操作者であるという、この箱庭状態を良しとするか、暴走しても限界を定めないで計算させてみようとするかで、いま生成系AIは賭けに出ている。
それは金銭的な賭けとしては最大もらっていて、もうゆだねてしまってラクになり、したくないことから解放されようとする試みではないかとも思う。
したくないと思うことがある事でも、時と場合によってはしたいことになるから、一概にコレと行動を決めてしたいとかしたくないの二択で永久にしたいとかしたくないと定めるのが間違いのもとで、そういう約束がいちばんしたくない事だと思う。
したいんならしたくないときでもやれとか、したくないんならしたくても辛抱しろみたいな外圧とか矯正が人間を苦しめている。やりたいときにやりたいことが出来て、したくないときにはそれはしなくてもよい、そういう選択の自由が勝ち取れている人間が果たしてどのくらいいるだろうか。
これは哲学とか科学というよりは、パワハラとセルフコントロールと人間関係の問題に転化されるよな。体育会系の古い慣習はやっぱり嫌で、それなら受験勉強の方が幾らかマシに取り組めたとも思う。まあ志望校はダメだったけどな。一応専門卒ですよと。
