手順書にしづらいのはそれが成長システムであるから

 こんにちは!カーメンこと宮澤郷介です!今日はたぶんシステム開発の話。

 いきなり別の話を書くけど、俺の趣味のストIIは色々な仕事に就いているひとの非営利団体格闘ゲーム対戦協会とでも言うか、ゲーセンに置かれたストIIの台を囲って皆で対戦してひとつは強いやつを決める、負けたものは強いやつに学ぶなどして全体の競技レベルを上げる向上心の高い集団であった。

 けど、他の仕事をしてゲーセンにカネを入れるわけで協会は非営利でもゲーセンは営利目的の施設なので、参加者の中には家庭用ゲーム機などで一緒に遊べば電気代だけで済むのでそうしたいと思うものもあったが、中に犯罪者が混ざると住居を教えて自宅で対戦会というのが危険なケースもあり、ひどいものは誰かのお宅をホテルのように甘えて使うものもいて、プライベートを守るためにゲーセンを利用するものと溝が出来た。

 また、昨今のプロゲーマーというのはもともと協会が非営利だったのにゲーセンが営利であり参加者に損があったその分を丸々自分の給料としてゲームを仕事にするわけで、何か仕事があって趣味でゲームをするものがプロに練習時間等で敵わないのは摂理というか、そこにも溝が出来た。負けても平気ならいいが、どうしてカネを出して負けてやらないといけないのか、ゲームで食うものがいるのにと思うと馬鹿らしくもなる。これ、特に俺の考えね。観戦者がいることも考えると、自分でやるよりプロにやらせて観る方が良いという人も一定数いるから成立している界隈だとは思うから。

 このように、ひとつの非営利団体も30年で変わってきている。それを踏まえてコンピュータ業界のなかでもとりわけシステム開発について考えてみたい。

 最初、パソコンゲームのプログラムは雑誌の見開きページに収まる文字列であった。

 そして拙作将棋ベーシックの製作には、俺が自室で3ヶ月籠りっきりでプログラミングをした。

 自室で籠っているので、会社でやるとなると風呂と着替えと電車通勤などで時間が取られるので、集中の維持なども併せて考えると、1.5倍から丸々倍の5~6カ月の工数が必要という事になると考えられる。俺の月給が当時33万円程度で、それは関西の多くの会社を回って相場で決まったものだから独断では無いと思うが、給料の折衝をしない人はずっと初任給から上がらないという会社もあるかもだし、大企業なら春闘もあり足並み揃えて昇給するらしい。とりあえず、お金の話を細かくするとキリが無いので、33万円もらっていたら33万円として、会社でもし将棋ソフトを開発していたら、33万円の5~6カ月6カ月としてみると198万円分の給料に、それを派遣会社の取り分が3割あったとすると260万円くらいの見積もりになるだろう。

 将棋ソフトの開発に260万円出してくれる会社があったかというと、俺は見つけられなかったけど、単価980円で1000本売り上げたら98万円は入るかもと、3ヶ月雇われ仕事をしないで自宅で作ってみたのであった。腕試しのつもりもあった。

 結果としては最初骨折り損に思えたけど、ベクターでの販売にこぎつけることで、ネットからのお金の入り口をひとつ手に入れたことにはなる。

 そして、開発環境はウインドウズVB.NETなので、ソースコードが自分の手元に残って作り足しの開発が出来るようになった。これが個人的に大きい。

 その後、時々開発を続けて、いまのバージョン3までに10年の工期を要したことになる。もちろん、時間をかけたら正比例的に出来るものではなく、他の開発者との交流や自分のひらめきなどで時々進化してきたものなので、詰まっていた時間を詰めて、着手して制作に入っていた時間だけを手順書にまとめれば短くなるとは思う。

 ただ、頭の中にあって打ち込みに専念して自宅で3ヶ月、会社なら6ヶ月かかったとして、それを打ち込みではなく手順書にまとめ上げて人が出来るようにすることも考えたら、その倍の丸1年くらいの工期がかかると考えられる。

 そうすると、派遣会社も通して1年の工期がいると520万円かかることになる。最初のバージョンでだ。100万円でも出してくれるところがなかなかないのに520万円出してくれる会社があるかと考えると、これは自費だから出来た事である。

 しかし、俺の月給が関西で33万円になる前の初任給は17万円くらいで、ソフトが東京中心だったところで、関西の企業が東京のソフトハウスに開発を依頼したら1000万円くらいの見積もりが来て、どうしてパソコンでプログラムを頼んだだけなのに1000万円も請求が来るのかということで、俺が採用を受けて会社に入って会社のパソコンでプログラマになったのが最初であるわけだが、将棋ソフトを作ってみて、自分が520万円で手順書を作って、そして誰かがその手順書でプログラムを組み込むのに同じ工期がかかるとすると、実に1000万円で足が出そうなくらいなのである。

 確かに、最初のゲームはパソコン雑誌見開き1ページ分くらいの文字列であったわけだが、システムは保存されてプログラムの部分的な書き換えで改変できて、そして工期を重ねて成長してゆくものであるから、それが理解できる技術者も当然ハローワールドの文字出力の簡単なプログラムから始めて勉強が必要だし、勉強していない技術者と呼んで良いのか分からない人に手順書で出来るようにすると言っても、限度があるもの。

 とはいえ、システムが肥大化して受発注に1000万円単位のお金がいるようになると、自社で抱えるにも外注するにも相当な資金力がいることになり、それが出せないとなると、どうにか新卒をひとり情報システム部として雇い入れる新卒ガチャを会社が回すしかないのである。対して、ベテランの専門家を短期間雇うために派遣会社がある。

 とはいえ、短期の雇用でシステムに改変を加えるとしても出来る分量は限られるので、お金としては儲かっていないが、自宅で将棋ソフトを作って販売してOSSにするまでの取り組みには個人的に大きな意味があった。

 そして、個人になって近所の居酒屋さんの注文システムを3万円で頼まれたが、まさか親父の文具屋の二階で個人商店の店番をしている坊ちゃんがちょっとした注文システムで33万円も居酒屋さんに請求することも出来ず、目一杯の3万円を頂いたのが独立しての最初の仕事なのである。

 さらに言うと、将棋ソフトでも強いものでも5000円くらいの書籍で概要が示されて、付属のCD-ROMのおまけとしてようやく成立するくらいが一般的である。ちなみに俺が参加させてもらった将棋ソフト大会の電竜戦の1位賞金は50万円であった。

 俺がシステム開発を個人で続けられるのは、親父の店があってそれで生活出来て余暇があるから、趣味でやっているから成立しているだけで、もし会社で520万円で請け負って売上金が無かったら会社が損だし、今までは会社が儲かって利益をピンハネされていると考えていたものが、自分で販売までやってみるとお金持ちの会社の社長さんのわがままを少し聞くことでソフト開発という利益にならない仕事をさせてもらえたと考えることも出来るようになったのだ。

 それがその値段を出せば何処の客でも同じように買える、手順書を作ってウチの従業員でも分かるようにしてくれとなると、職域も超えた不当な値切り交渉だと思う。

 けどまあ、居酒屋さんのシステムを頼まれたのは、その仕事を考えると値切りとまでは思わない。この辺は完全に俺の贔屓ではあるが、与するものを選べる強い立場になれたと思っておく。お金が無くて雇われて言うことを聞くしかなくなると仕事も選べない。

 ただまあ、コンピュータシステムは長期保存出来て、手を入れると成長するものだから、最初の頃に初めて長くやっている会社には新規参入者が越えがたい壁はあると思う。新卒のときはバイトだったけど、派遣も経て20年以上やってみて、将棋ソフトとは言えネットに公表できる作品がひとつ出来ただけでも、やった甲斐はあったかな。


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