夏目漱石の「こころ」の意味をもう一度考えた

若いうちに勉強しとけば良かったと言う人の話は耳にするけど、俺は受験なんてしないでパソコンゲームいっぱい遊びたかったと思ってる。普段は言わないけどね。小説なんて若いうちに読んでも意味分からんし、変に感化されて三島由紀夫みたいになってもダメでしょ。

そんで、夏目漱石の「こころ」なんですけど、あたたかみのある人柄の先生が叔父から裏切られたことを知り孤独を感じて、しかし後に自ずから友人を裏切ってしまったという後悔にさいなまれる。ちょっと分かる部分あるんですよ。人に良くするように育てられたから。

そんでも、親父は良い人の輪に囲まれて育ったから俺にも人にやさしくと育ててくれたんでしょうけど、小学校の同級生にファミコンカセットを借りパクされたり、遊び友達に5千円くらい貸したら逃げられたり、そういうことがあってもその時には「貧しい寂しい人がいるもんだな」と思って親の教えは守っていたんですよ。まあ、モノやカネを分け与えることくらいしか優しさの意味がわかっていなかったってのもあるけど。

そんでもプログラマーとして働いて3年目に会社の近くにマンションを借りて骨を埋めて働く気になったのにソフトの完成後に契約が不利になっていって、バグ取りが済んでサポート業務に回ってあとは売るだけという段に派遣切りにあって、仕事を転々としながら絵画のキャッチセールスで200万円くらい取られたりしたんですよ。

なんか、口上に騙されたと思われるかもですが、一度契約してクーリングオフしてから、何度も何度もショールームに通いつめて、ネット掲示板悪徳商法と書かれているのは本当なのかとか、買ったことのある人が詐欺だと言うなら分かるけど、誰も買ったことがないのに詐欺だと決めつけてセールスマンを迫害するのもかわいそうというような気持ちがあったんですね。そういう、演技に長けて面の皮が厚く強欲でお金のためなら何でもする詐欺師って人が世の中にいるんだってことが実際に騙されてみるまで分からなかったんですよ。

そうこうしているうちに母親が家のカネを持って逃げて、蒸発と言うんですかね、まあ普段は「離婚した」くらいに言うんですけど、そうしてカネの無くなった親父に投資を持ちかけて残ったなけなしのカネすら騙し取られた話を聞いて、でも親父も商売をやっていたから「熱心に売り込みに来よるから買ってやったんだ」と言うんですよ。

そうして俺は父親のもとに帰って、家族みんなが湯水の如く使っていたお金が本当に底をついたけど、親父の本当の仕事は自営業でなく、祖父かそのもっと前からの地主であることに気付いたんですよ。お金はないけど土地があるから不動産経営をするとお家賃は入ってくるんですよね。

それから銀行とか不動産屋とかハウスメーカーとか、そのへんの人に書類いっぱいサインとハンコさせられて、どうにかこうにか食っていける状態に戻って、またちょっと働いて、貯金も出来て、まあニートみたいな生活してるんですけど、そこへ来て夏目漱石の「こころ」を読み返すと、1回くらい裏切られた、1回くらい欺いた、それくらいで千円札の顔になるくらい本が読まれるって日本人ってどんだけ善良やねんと。

なんか最近じゃ本を書く人も増えて図書館でも本屋でも読み切れないほど本があるし、映画でもテレビでもマンガでも面白いし、千円札も野口英世に変わったけど、なんで夏目漱石だったのかなって考えちゃうんですよね。大した本じゃないのになって。

「こころ」より「坊っちゃん」のほうが面白いぞって付き合った人から教えてもらって、あれはまあキャラが立ってて読み物として面白かったけど、なんだろう。「こころ」のような本を書いた人を千円札の顔にして国民を道徳的に善良にしておくことで得をしてきた人間がいるのかなって気はします。

たとえば千円の価値は時代によって変わってきてるけど、昔はもっと価値があったって言うじゃない。そんで昔は金利がもっと高かったって言うじゃない。だけど銀行に預けてた金利より物価の上昇の割合のほうが多ければ、お金を預かって金利が付いても引き出した時に買えるモノの量は少なくなるじゃないですか。

そういう風に長い時間と大きな仕掛けでお金を預けたほとんどの人は真綿で締めるように弱められてきたんじゃないのかなって考えるんですよ。

そんで俺はと言うと少し人間不信になった時期があって、お金の貸し借りで少しでも損をしていると思う関係を全て断つと気がつくと周りにほとんど人がいなくなって。でも、損してるって言っても「一緒に飯でも食おう」と誘われて交通費と飲食代は割り勘でも損してるって考えちゃうのはちょっと違うかなと思い直しているところです。

結局、そういう離れた友達と安易な付き合いでも回っていくほど普通の人はお金に困ってはいないけど、働いていて、何気なく使って、金持ちになりたいとか思わずに過ごしていて、それを「勿体無いなぁ」と引いて見るようにいつからかなってしまったんです。ゲーセン行ってジャラジャラ100円入れてゲームするとか、もうもってのほか。

何となく使ってたけど、千円って何なんだろうなってお札をながめて。いや、もう夏目漱石から野口英世に変わったんですけどね。病気を治す治療費が千円くらいかなと。保険に入ってたらの話ね。