忘却というのは恐ろしい

俺の部屋には初めてのパソコンValueStarNXを壊れたまま置いているの。

そうして、時々色々とパソコンを買い替えてきたが、あのパソコンのままでももっと色々の仕事が出来たのではなかったかと悔いることがあった。

だがそれは勘違いで、あのパソコンを使っていた頃は計算量計算とか計算必要資源の目算が立たず、ひとりでは到底無理な分量とか、パソコンにどれくらいのデータが詰まるか、容量4ギガでもOSで500MB使って無圧縮のデータを加工するのにパソコンを使ったら、3Dグラフィックスにはスペックが足りないということを分かっていなかった。

それなのに、3Dでグリグリ動くゲームをパソコンで作ろうとしたのはパソコンの初期ソフトにバーチャファイター2のデモが入っていたかも知れない。ゲーム機として動作スペックはあるのだが、開発スペックとしては足りない。それはターゲットに加工圧縮して収めるデータを開発時には無圧縮で加工してゆくからなのだが、プログラマの先輩に意地悪をされてデータ加工ソフトで作ったデータをプログラムで動かすのではなく「出来るプログラマはしょぼいノートパソコン1台でもゲームプログラムを書ききる」という嘘を吹き込まれたのも一因だ。

まあ、賢いやつならすぐに嘘だと見抜くのだろうが、その先輩のプログラムの力量も相当なものに見えたので、つい信じてしまったのだ。だからCAD/CAMの職人でなくプログラマという道を選んだのかも知れない。

それが最近では3Dゲーム以前に2Dゲームをこじんまりと作ったり、グラフィクス的なゲームの面白さより麻雀とか将棋のようなテーブルゲームのルールや手続きや得点などを競う面白さこそがゲームの中核であるというような考え方にシフトして、ValueStar4GBモデルならそれはそれで出来る仕事を目算できるから、またあのマシンを今の力量で動かすと何か使いみちがあると思ってしまうだけで、当時の俺にはそれは出来なかったし、マシンも壊れて動かない。

忘却というのは恐ろしいもので、最近まで「あのマシンを使いこなせなかった」と自分を責め悔やむような考え方になっていた。それが、ブログを読んでいた方から反対に昔のログを掘り出してもらって、CAMの仕事をしていたことを思い出すと「ああ、買い替えて良かった」と安心を得たのであった。

あれから20年経つが、今のマシンでもターゲットPS2くらいのゲーム開発でもちょっと無理があるんだろうなと思う。俺もプログラマとしては辛うじて本職であるのだが、もっと年配で知識や技術のある方でも家のパソコン1台で単独作業となると初代プレステの売れないしょぼいゲームのデモ程度のものしか作れない。

今でも最新ハードのローンチタイトルつまり同時発売の看板タイトルみたいのが何処で秘密裏にどんなスペックで開発されているのかは俺は及び知らない。これでも金融系SEとして日本中の銀行のATMのデータが集まるサーバールームに入れてもらったことがあるのだが、それはそこでハッキングや預金の操作みたいな悪いことを絶対にしないという信用を勝ち取れたからであり、プログラム技術だけでは入れてはもらえない。それでも、ゲーム開発の仕事は任された時に昔にバカにされた友達に今なら見返してやれると開発に携わっていることを口外してしまった。それを上層部に察知されて、それでその仕事はアルファロムの開発のみで契約満了となった。お金はもらえたが、それ以上のもっと凄い開発現場みたいなところに出世と言ってよいか、そうなる夢はついえた。

プログラマになったすぐは守秘義務厳守で家族にも仕事のことは言わなかったのだが、姉が結婚して親戚筋からゲームのデータを分けて欲しいと頼まれたりして困ったこともあった。

ちなみに待望のPS5は予約しておらず出たら買えると甘く見ていたらネット転売で値段が高騰して流石に言い値で転売ヤーに儲からすのはないなと思ったら手に入らない。

最先端のソフトは開発者の端くれである俺でも発売日を待って買うしか無い。そう言えば大手ゲーム会社勤務だった昔の知り合いも発売日を過ぎて売れ残ったソフトを社販で消化する話などしていたなぁと思う。

まあ、ネットがあるので近頃では納品もメールで、すべての開発者が一同に会する秘密基地のような開発現場というのは存在しないかも知れない。どこでどうやって完成するんだか。


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