夢だった

 俺は専門学校で3DCGの専攻だった。高校の時にプレイステーションが発売されていて、2年のフリーター時代にはバーチャファイター3が出ていた。しかし自分ではカプコンヴァンパイアハンターエイティングバトルガレッガに夢中であり、時代遅れな少年だった。

 在学中にフローチャートからプログラムやワープロソフトに表計算など基本的なアプリの使い方にデータベースやモデラ、カメラ、レンダラーなどを実習として使えたが、プログラマに憧れていたので、既成のソフトを使った実習にはどこか引いていた。

 それがプレステの3Dの面白いゲームにハマらなかったのが、単純と言って良いか、十分複雑なのだが、3DCGにはやたらハマった。モデリングレンダリングで数分のショートムービーを作っていた。

 卒業後は未来から過去に戻ったような感覚だった。ヘボいパソコンゲームの会社でもプログラマとしては半人前で、しかしそのまま転職で良い会社に入ってしまう。

 まあ社外秘を漏らすでは無いが、期待されたのはウインドウズに長けていたので、数値入力が基本だった3Dの物件入力にマウスを使うというような部門である。

 アメリカ製のライトウェーブやオートCADに国産で勝てるのかというところがポイントだが、まああの頃の開発部と言えば暢気なものだった。期待されてもらった高給を遊びに使っていた。

 それから紆余曲折はあったものの、あの頃の続きというか、専門学校の研究の続きをやりたいなぁ、とも思っていた。CADの入力を良くするというのは俺の再就職の課題としても宣言していた。

 それがこの体たらく。SNSでも昨日発表して、30人ほど先に見てもらったが、CAD/CAMという発想ではなく、モデルでもレンダリングでも頭でやって数値を直接入力してしまえば仕事が終わってしまうのである。

 そもそも、2Dの画面でXY座標を打つのはポインティングで済むわけだが、ピクセル単位になるとマウスやトラックボールよりもキーボードを好むドッターがいる。

 そしてZ座標を打つとなると、三面図で横から見て打つわけだが、それが形状が複雑になると、同じY軸から見たXZ座標の近いものから目的のポイントを拾うだけでもGUIではメチャクチャ手間がかかるのである。

 その目的の絵が頭にあるのなら、いっそ座標を数値入力したいと何度か思っていた。

 しかし市販のCADにはポイントを数値入力で入れていけるものはなく、反対に在籍していた物件入力の先行開発はフル数値入力の計算ソフトであった。

 まあ、グラフ理論をやると立方体は8点12線の無向グラフとなる。8点、座標で打ってそれをレンダリングするとなると、基本的手法としてレイトレーシングが考えられ、そうすると光源と被写体とカメラの三点の座標を持つわけである。

 けどまあ、スーファミスターフォックスくらいのゲームを考えると、ゲーム画面として騙すだけなら三角関数と三角形の描画でも十分そうであり、三角形が3Dなのではなく、動く三角形を見てプレイヤーや観客が十分3Dだと分かるから成り立つだけで、画面は2Dであり、2Dを取り扱うだけなら3DのZ座標は計算途中にメモリ上のみに存在して、計算結果としてはXY座標になるわけだから、計算の結果として消えてしまうなら、オンメモリーで答えとなるXY座標のカタマリを持つだけでも疑似3Dになりそうなものである。

 そのへんのカラクリを昨晩あたりから考え出して、まあ今日もぼちぼちやろうかと結果自体は急いでいないが、プロジェクトXのカメラ付ケータイの回を見て、その開発が最終的にかなりの個人プレーであるように描かれていたが、対外的にはその昔にIT営業からSH社に入る時には同社はかなりの人海戦術を取る会社であるとの評も聞いていた。実際、控室には従業員はたくさんいて、誰が何をしているのかひとりひとりは良く分からない。

 だから対外アピールをしっかりしないと、個人の仕事としては平らに評価され、高給取りとして入った時には周りはまだ敵だったようにも思う。

 まあ、ハードウェアをやっている人もソフトウェアをやっている人も平らで同じ従業員なら文句なしかもだが、ソフトが外注でそっちのほうが給料高いとなると不平が出るのも、そりゃそうよねって話で、だけどまあ外注と言ってもハードを買うユーザー企業なので、ハード買う分をお給料に乗せてもらわないと所得的には釣り合わない感じもするんだけど、俺の場合は派手に遊んでいるのが目についたようで。

 ただまあ、座標を打てば片付く3Dを3D座標として計算するのではなく、UIを考えますからと提案して、研究開発と銘打ってプログラムを組んでソフトウェア工学の本を読んでオブジェクト指向に行って、結局複写機のタッチパネルを作っただけ、という今までの落としどころを考えると、従業員の給料が平たいとしてケータイにカメラ付けた人よりもしもらってたらもらい過ぎで、やっていたことは夢のようなことだと思った。

 そもそも市販品としてスーファミが定価25000円でスターフォックスが9800円だったと思うので、それより後から来てソフトウェア開発だと言ってオブジェクト指向モジュレーションばかりをやってきたというのはTPOを全部間違えた独習ゆえの回り道であり、会社からもらったお金で勉強をしていたところで開発の成果を献上する前に退職してしまったとは思っている。悔いている。

 この始末書だけでも書いて残しておかねばならないというのが今日の反省。そして昨日の作業分はいったんOSSとして公開したが、ウォッチャーがひとりということで、誰かには仕事が伝わったとして、そのままプライベート開発に移行しました。

 どこかで買ってもらえる技術なのか、既製品の二番煎じになるか、それでもネットで検索しても出てこないくらいというレベルではある意味で最新技術だと思う。観測範囲がOSSだけなら、ということになるが。


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