ヒット確認に漏れがあった時点で俺の負け

 「ストリートファイターはギャンブルである」というのはその前に「対戦ゲームはコミュニケーションである」という趣旨の文に対する反論の形で打ち出されたもの。

 手短に言って、ゲーセンでしている以上は正論であり、家庭用が主流になった今だからあらためて過去の「コミュニケーションである」が成立しただけでいっときはギャンブル。

 そんなことを何故するのか、ということにギャンブル性があって勝ったり負けたりなら分かるが、そこに無敗のチャンピオンがいたら。それもツカツカ歩いて手を出したら昇竜拳を後出し、じっとしていたら投げる、そんな神業があったら。

 そんな神業あるわけない!とウメハラに突っかかって高田馬場ベットハーフで色々な人がウメハラと対戦したがっているのに台を占領して、とかくインチキ破りをしてやろうと二択に対してずっとガードして見たり、ずっと逆張りして見たり、とかく普通にジャンケンになって勝った時には1-15くらい差が付いていた。まあプロ野球でも打率3割くらいあればよく打っているわけで、十分な差でしょうとウメハラは言うし、俺が意気がって大枚を両替して挑んできたから怒らせ過ぎないように負けておいたとも見れるし、それを「ウメハラに勝った」というと先輩から冷たく「君、接待って知ってる?」「いやそうじゃなくて」などという風だったわけですが。

 それでもウメ神話は無敗ではなく勝率とか大会優勝回数とかで見るようになっていた俺は相変わらず負けても負けても強い相手に突っかかって、何かそれぞれに種があって勝負することで種を明かしてやろうという面白さがあったし、ゲーセンに種を持って行って100円玉ってか50円玉が主流で10回も勝てば牛丼1杯儲かるわけで。

 それがいつしか自分にも馬鹿のひとつ覚えのように「ヒット確認」という種が出来て、ストIII3rdでは勝ちまくっているという噂が流れたときに「そんなこと出来るわけがない」と突っかかって、勝っても勝っても入って来て「ほら、いま食らったのに出なかった」とか「ガードしたのに漏れた」とかはしゃいでる人ともやりあったんですよ。

 これ、かなり今更だけど歩き昇龍とか弾ジャンケンの無敗を売り物にしているのと完全に攻守交替で、まあそりゃミスはあるでしょって今だから言うけど、プロとして考えたら確認漏れた時点で負けだったのかなとは振り返るんです。

 最近の事情は動画で見るだけだからどれくらい勝負が来てるのか肌感覚では分からないですが、正直遊びとして趣味としてでは辛いだけってくらい勝負が厳しかった時期はありますよね。歳食って適度にサボって下手なって来て負けるようになって、そこからもういちど来た道を思って分かるようになったこともあるので、趣味として遊びとして何がきついかってやっぱ50円玉賭けてたからだとは思うんです。50円が惜しくなくても勝率になって、カードに勝敗が記録されて勝ち越しなら出来ても明確に勝率4割とか出てくると、負けたなって表示されているのを背負ってやるわけで。

 まあ、今思うとコミュニケーションは会話とジェスチャーで取って、それのないゲーセンだから通信対戦の試合内容に通信内容が実存するかのように思えるって程度で、8方向レバー6ボタンで言えることと言えないことはあるとは思いますね。


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