「鉄爪のオーク」が強いのを知らない人は案外多い

 MTGについて今までさんざ悩んできたが、ついにそれが快方に向かっている感覚がある。遊戯王と比較して、MTGはカードバランスが良すぎるところが反対につまらない。当たりのレアカードである「シヴ山のドラゴン」はドラフトならファーストピックで間違いないが、もし同じパックに支配魔法と恐怖と稲妻と火の玉が入っていたら、そんなことがもしあったら俺は支配魔法を取って青のドラフターになるかもなと思う。

 今回のデッキメイクに当たって、レアカードとかアンコモンの「誰もが最初に当たったら強そうだと思うカード」を積極導入することとした。意外なことにチャンピオンデッキに「鉄爪のオーク」のような弱いカードが入っていることがあって、のちのちウィニーとかスライとか言ってメタゲームの想定敵のひとつとなる。それ以前から白デッキに白騎士、黒デッキに黒騎士、緑デッキにエルフの射手を入れる人はいて、どうしてそんな弱っちいカードを上手い人が使うのか不思議だったことがある。始めたすぐ。

 今回のデッキにも先兵の精鋭、隊商の随員、天望の騎士などの弱っちいカードが多数入っている。速攻戦略で勝つときとそれ以外を割り切ってあきらめるというのはウィニー系デッキのひとつの落としどころで、長らくそのジレンマはゲームバランスをゲームの作り手が調整したために想定の範囲内で打破できないものなのだろうと考えてきた。

 そして、スタンダードなどの構築フォーマットで台頭するデッキが想定外の強さだったのか、それともまず強くして大量に買わせて禁止発行でフォーマットを変動させる二段仕立ての罠なのかというところも気になる点ではある。

 だけどまあ、プレイヤーとして参加する上でそういう所に文句を言っても始まらない。コモンカードでも強いカードもあるけど、アンコモンやレアカードの強いカードが活躍して初めて封入率や購買数から買ったものが勝つある種の狙い通りの健全さが出てくるだろうと。

 師匠の藤田剛史が不健全な人だった。「トレカなんてカネでしょ」という一般的な批判に対して「コモンでも勝てる」という所を打ち出して「安く遊べる身近なゲーム」という触れ込みをMTGに持たせたいと考えていたのだろう。

 けどそれから20年、持ってあと2年と言われ続けたMTGも30周年かなんからしい。十分にカードが流通していて、その中で基本セットのカードはレアカードでもアンコモンでもそんなに珍しくはない。

 その中で、あなたも持っているかもしれないこのカードが強いよということを、レシピに入れて示したい。ちょっと斜に構えた物書きが攻略を書く中で、いろいろの人がゲームに参加して、何らかの事情で使われなくなったものの、順当に考えて「強いよね」となったカードがアンコモンやレアで、それを強い人が独り占めしていた時代があって、それらは当たりにくいということに加えて、トレーダーが交換で狙ったから流通量が少なかったという背景もあって。

 そんなわけで、今日は「持っているなら使ってみな」と思うカードも初めは弱いと思われたコモンカードもゲームバランスというかカード間のマナコスト対効果でどれか一辺倒になるのではなく、こんな感じに持っているもので強いと思うものをマナカーブに沿って並べれば、どんな相手と当たるかわからない中でもまあ勝てるんじゃない?と。

 何度もドラゴンについても悩んだ。シヴ山のドラゴンに相当する炎破のドラゴンは召還した次のターンまで生き残れば一撃でゲームを決める強さがあり、入れるか悩んだ。

 だがなぜ入らないかというと、自分のデッキにも入れているように白除去黒除去はまさにドラゴンのようなカードに対策するために誰しもがデッキに忍ばせるし、そもそもウィニーデッキのゲームメイクではドラゴンの召還ターン以前に勝ってしまうのが目的である。折衷案でドラゴンより1マナ軽いセラの天使を検討したけど、レアカードである願いのジンのほうがゲームメイクが面白そうだということで、そうした。


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