待ちハメありのストIIみたいにトレカで遊ぶ子供に習う

 トレカの大会であと1歩で優勝というのを逃し、苦い思いをしたことはいつまでも覚えている。だが、勝った試合は案外覚えてないもので、8人ドラフトでの優勝とかMOでチケットを賭けたトーナメントでの優勝などを今までかなり軽く扱ってきた。

 格闘ゲームの趣味でも中学くらいから勝つのが当たり前で、負けたことはよく覚えているのだが、古い仲間から「その勝っても嬉しそうでもなんでもない態度がイチバンむかつく」とのことである。

 「ゲームのために上京とか、海外旅行とか、なんでわざわざ行かなアカンねん」と言われながらも、自分が行って入賞した自慢を聞くと相手は羨ましくて、そしてそれを捕まえて負かして腹いせをする。その負かされる過程で反対に何度も勝っていても、最後には負けて皆が大はしゃぎするというのは例えば金メダルの選手が地元で大歓声を浴びて凱旋というのとは違って、ゲームやトレカが低俗だからじゃないかと俺は思ってきた。

 もちろん、スポーツ選手の練習量というのは凄いだろうし、体術はそう簡単に真似されないと思うのは俺が勉強型だからで、音楽家が素人の演奏家に負かされる、後進国が先進国に道具の要らない競技で勝つ、同じように自分がゲームで負けるのも、ただ行動的でない人に対して結果を持っていないから侮っての結果であって、ひょっとしたら時の人の藤井聡太さんでも名人戦より三段リーグを上がる時に最も苦心していて「コンピュータ将棋に人間が負けるわけがない」と豪語する地元の不良は何回もやって1回勝てば勝ちだと思っているから負けを数えていなくて、すべからく勝率やトーナメントを想像できなくて、名人相手でも何度もさせれば本当に1回くらいは勝ってしまうかもしれないし、だから名人は対局料を取って滅多に勝負しない。

 そう考えると、今まで色々のゲームをしてきたけど、誰からも対局料など取れていないのだから俺はプロとは見做されないだろうし、そうして無料で相手したにもかかわらず感謝などされない中で、苦渋の負けに追い打ちをかけるように「プロやったらいっぺんも負けたらアカン」などと年寄り筋から説教をされて、そして試合の実際の相手はお孫さん。

 それで、ふとそういうものかもしれないと考えるようになった。トレカの強い人の勝率が7割程度で勝率7割で8回戦を勝ち抜く確率は1割を切る。そして長い目で見ると3割は負けているわけで、その3割が全て決勝での名勝負とかプロ同士での接戦というわけではなく、自分がそうであるようにトーナメントの脇で「やってください」という子供にポロっと負ける。

 将棋で横歩取りが禁じ手であったように格闘ゲームで投げハメや待ちが忌み嫌われるように、トレカでも公式ルールで禁止カードが改定されたりはするが、ルールギリギリOKでもつまらない手というのはどこか混戦を経験した人々は最初の方で経験して飽きている。

 だが決勝を観戦して名勝負に酔うところから入って大枚をはたいてレアカードのたくさん入ったデッキを持つデュエリストが熊にエンチャントクリーチャーを2枚貼って殴ってくる子供のデッキとか誰かが赤単を作ってゲームをよく知らない人に「順番に唱えたら良いから」と言って持たせたデッキと勝負したら。

 そういう見て見ぬ振りをしている「つまらないマジック」にももっと目を向ける、そういう勝ちでもトーナメントなら1勝なわけだし、そういう負けでも1敗だ。そこを本当に7割勝てるかというところで勝負しないで、混沌と様々の攻略法が語られる中で迷ってしまっている人に勝てるのは誰かがラリホーメダパニをかけたモンスターに殴り勝っているだけで、マネマネが4体出てきて自分のパーティがモシャスで完コピされた状態で誰も死なずに勝てるか。

 ダブルニーハメも待ちガイルも何でもありで、その中で1勝50円勝ちで反対に店の全員が認めてくれるということも格闘ゲームでは経験して来た。ここは地方のゲームショップで、反対に入賞で認めてもらうものではなく、相手にされていない子供のデッキに丁寧に1勝を納めることこそが自分に足りなかった最後の1歩ではないかと。もちろん続けるなら先にも道はあるだろうけど、その道を行く前のマスターピースが地域の子供とのデュエルで納得を得ることだ。

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 まあ、色々のつまらないマジックを制することを念頭に置いて再びデッキを回すと高価なカードのたくさん入ったデッキを仮想敵とするよりも巷の子供のマジックにこそしっかり勝ちたい。自分の本当の目標はゲームでそうしてきたように「勝って分からせる」相手を負かして従えるというような戦国時代でもないが世の中には勝負が決していても目の前の勝負に今負けたことが分からずに文句で捲し立ててくる人間というのは多い。そういう人間は心で別のものが見えていて、そこを捕まえて負かさないと心からは負けを認めない。

 「トレカはお金のかかるもの」という人に勝っても「結局高いカードいっぱい入ってるだけやん」とこう来られるわけだし、そう来たところでコモンデッキなどで勝っても「なんで大きいクリーチャが入っている方がちっこい雑魚みたいのに負けんねん」から「事故や」とやり直しになり、結果勝ち越していても相手が運良く回って1勝するまで付き合う羽目になる。

 そこで勝率を数えていたら、どちらが事故でどちらが順当かというのは世のマジック観とは反対に良いカードを持っていないように見えるデッキに本当の強さがある。

 今でも自分でも「ヴィティアのとげ刺し」や「棍棒トロール」を我慢して「小川跳ね」を入れたほうが強いというのはにわかに信じがたい。両方のデッキが軌道に載るとカードアドバンテージになるほうが勝つからだ。

 しかし計算上でも巷の子供のデッキでも、それは「小川跳ね」くらいの安価なコモンしか持っていないからそういう戦略を取らざるを得ないように見て取れるものの、自分も振り返って数えたら、そういうデュエルの方にそういうデッキの方に軍配が上がっていると思う。


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