俺的音楽史の中で恩田義人さんが消えていた話

 JUDY AND MARYのギタリスト「たくや」さんの本人が弾いてみたを見てた。

 なんか自分の話で申し訳ないけど30代に心斎橋のライブハウスにお邪魔して、ライブミュージシャンの皆様と暗い目のバーでの打ち上げに同席させてもらった。

 それまで俺はテレビとかラジオとかCDなどで音楽を聴くばかりでアップルの新製品であるところのiPodをいち早く買ったり、iPhoneが発売される前にNECのケータイにビデオ撮影機能や顔認証が付いていて、それでライブ映像を取って演者さんに「こういう風に撮れてますよ」とケータイで見せるとめっちゃ驚かれたりしていた。

 それがライブハウスで演奏を生業にしている人々からすると、レコード会社からのメジャーデビューしたバンドが「ライブハウスで活動していて」とか書いてあることあるけど、どこからともなく出て来て彼らの情報網にかかっていないところからぽっとでているんじゃないかみたいな話を聞かせてもらった。

 俺もかじった話で、レコードはジャケット写真になるアーティストとレコードの内容である音源を録音するスタジオ専門のアーティストの合作であったりする話をした。

 そんな折に新型のMacでギターをかき鳴らして「歌ってみた」をアップした俺は同じくネットをしている人に「見たよ」と言ってもらったけど「ホントにあなたなの?」という話がまとまりきらないまま「なにそれ?」という人や夜の町の喧騒に飲まれて、唯一の連絡手段であったSNSが音信不通になって二度と彼らと会えなくなった。

 その後すぐから「本人が弾いてみた」が流行って、いくつかのアーティストがスタジオミュージシャン忍者演奏疑惑を晴らさんとしていた。

 そういう話をライブハウス界隈ではなくトレカのオタ仲間界隈にすると「君なんも知らんねー、ああいうのは全部プロデューサーがいるんだよ。君の好きなGLAYジュディマリも全部佐久間正英」「さくままさひで?」「おじいちゃんだよ」

 そんな話から彼是十数年、そんなこともあったなぁと思いながら「たくや」さんの「小さなほにゃらら」を聴いて「あの曲のギター好きだけど本人演奏でも何かが違う」と思って、本棚の本を全部出して奥にあるCDの中からJAMのベスト盤が出てきた。このCDは昔から持ってたやつとちがってMacに音源を移した後にブックオフしてパソコンの買い替えやら何やらで音源を無くしてまた買ったというやつだったと記憶しているが、それでもそこから十数年経つと奥から出てきたものになる。最近買ったのではなくギター弾いてる俺の部屋から出てきた証拠品みたいな扱いだ。まあ何の証拠でもないけど。

 そうしてそのCDを富士通のノートに食わせるとアーティスト名以外に作曲者も自動で入って「小さな頃から」の作曲者は恩田義人さんになってんの。いたいた、ジャケ写でピエロっぽく映ってるおっちゃんでJAMはYUKIとたくやの若い組とベースドラムの老けた組が混ざって出来たバンドだった気がする。

 佐久間正英大先生とギタリストのたくやさんの間に消えたってか俺が勝手に話の中で消してしまっているだけで、いたのよ。

 そう考えると、バンドがあって売れたり売れなかったりでも年食うと出世する人もいて、手塩にかけて育てた若手が絶賛売り出し中なのかもだけど、まあゆるく家族みたいにプロデューサーの爺さんからバンドの子役まで業界の仕切りの中で人間関係があるんちゃうのかなと。どうしてもファンは情報を求めてアプローチを仕掛けるから、そこは守衛さんがいる大型スタジオだけではなく、芸名を使って素所を隠してうまい事やってんでしょう。

 売れっ子の作曲家は年間10曲以上作るし、CD聴くだけならたくさん持ってるけど、その中で自分がギターもって「こんな風に弾けたらな」と思うものの数はだんだんと厳選されてくる。最初はゆっくりしか弾けなくてスローバラードとかコピーして、その間に自信で繰り返して弾く間に年も取って若い頃の速いテンポの音楽から離れて、そうなった後に歌ものを歌として味わうようになって、だけど何か満たされない。

 そんな時に歌の合間にちょっと入るギターのフレーズが記憶から蘇って「ああ、ハマってたな」とか思い出すんです。


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