目の前に

目の前に超売れたゲームのプログラムがあって読み放題なんだけど全部アセンブラ。これはもうアセンブラだから凄いのか凄いからアセンブラなのか、今ならC言語があるだろって。これがC++までいくとやりすぎなんだろうな。C#とかも!


席が変わって階も変わって、休憩時間にPS3で遊んでいる人がいたりして、背中でゲームの音を聞きながら、ああ、俺はゲーム会社に勤めているのだなと。これで納期なんてものが無ければ言う事ないんだけどな。


電車に乗る時に柴咲コウのアルバム(ベストらしいがガリレオしか知らない)かけはじめると着駅でちょうど終わる。帰りの電車で試してもちょうどだった。行きは乗り継ぎタイミング合ってるけど、帰りは待ち時間があるのに時間が同じ。朝のラッシュの階段を牛歩戦術で昇る感じでタイムロスがある。


ふと気付くと俺は昔の自分から人に挙げられた欠点を取り除いて、かわりに自分らしさのようなものを前面から取り払ったような、人工的な普通の人になっている。服は地味になったが、ひげを剃ったり歯を磨いたりを抜かす日もなくなった。初対面の人から目立って嫌悪感は抱かれないが長い付き合いの友人とは連絡を取らなくなったし、これから見知らぬ誰かと必要以上に仲良くなる気も無い。


昔の自分らしさとは取って付けたような個性だと思うが、たとえば女性なら顔に化粧を付けて暮らすのが普通で、取って付けたものでも個性が無いと他人からその人だと識別されなくなってしまう。そして、識別されない事が案外居心地が良い。女がある日化粧をやめてみると誰からも気付かれず、すり抜けるように暮らせるようになる、という感じか。


俺はいなくなったのだ。


駅のホームで通過する特急電車にふと吸い込まれそうになり、身震いして半歩下がる。その姿を他人に見られてしまった。しかし、背が高い事くらいしか特徴が無く、人混みにまぎれてやがて誰か分からなくなるだろう。