五次元にカネを捨てることが出来るのか、という話

ドラえもんには四次元ポケットという不思議な道具がついている。

建築図面が三面図で示されるように、世界は三次元で理解されている。

しかし、子供の絵や昔の少女漫画にパースが効いていないことから、目で見たことは人は二次元的に理解しており、訓練によって三次元を形成してモノを作ってきた。

そういう風に三次元でモノを作るように出来上がった世界で四次元というのは幅高さ奥行きでは表現できない異界のような不思議なものであると理解されてきた。理解されてきたというか到底理解の出来ないものであると想像されてきたと言ったほうが良いかもだ。

それでドラえもんの四次元ポケットもポケットには到底入らない大きなもの、ほぼ無限のものがポケットから取り出されるようにポケットの中が異界と繋がっている表現だ。

一方、コンピュータグラフィックスの世界で数式上の四次元をモニタに写像したものがシーグラフで幻想的な映像であると評価された。

監督の河口洋一郎には「四次元とは何であるか」「コンピュータの中で何が起こっているか」という質問がたくさん寄せられたことだろう。専門学校の学生の頃に四次元を知って東大教授になっていた河口洋一郎の講義をひとコマだけ受けた。

みなポカーンと聞いていたが、金髪で目立つ俺に目が合った川口教授は早口でペラペラと話してはいたが「x^2+y-2+z-2=nとなるような球体のnに時間tを代入すると時間とともに球の大きさが変わる映像が作れるが、そこで試しにyとtを入れ替えるなどと計算式をデタラメにいじるとコンピュータが面白い映像を次々と吐き出すんだ」という話をしてくれて、リップサービスで「坂本龍一と組んで映像に音楽を載せてもらおうか」とニコッと笑いかけて講義を終えられた。

なんだ、思っていた四次元とは期待はずれな四次元なものだと思う一方で、自分が授かった四次元の理解に付いてこれていない人もどうやらほぼ大多数であることに気付いた。

反対に大学1年で習うマクローリン展開つまり自然対数eの虚数ix乗について分からなかったが、紙に数式を書くだけなのでみなサラサラと書き写す。それについても悩みながら、四次元のほうが簡単なのになと思って学校の実験室に籠もった。

四次元にがっかりした俺は、ドラえもんの四次元ポケットのようなものは出来ないかとまた別の想像を膨らませた。コンピュータ上で数式をいじって結果の映像を見ているうちに河口研の四次元は頭の中でイメージできる。ではどらえもんは、五次元か、もしくは六次元だなという結論に達する。

ディスプレイはまだ二次元なので、学校に行くとみなサボって遊んでいたので人数分ある実習室のコンピュータを10台くらい占領してアニメーションを作っていた。

結局のところ、投影して出来るのはアニメーションなので「宇宙作ってんの?」「これ五次元なんだ」「何いってんの?」という感じだった。

そうこうしている間に五次元の噂は一旦広まるもののすぐに収束して「ホーキンズ未来を語る」で最新の物理学ではx,y,zの空間に時間を足したx,y,z,tの時空、それに加えてitという虚時間が発見されたというようなことが書いてあった。奇しくも情報技術ITと同じ綴りである。

四次元もまだ時代が来ているわけではないが、だんだんと理解はされてきていて、理解した人から順番に思っていたような面白いものではないという落胆の声が聞かれる。

そこへ来て、アニメ「君の名は」のラブコメとしてはぶっ飛んだシナリオにRADWIMPSのテーマソングには「五次元にからかわれ」という一説があり、映画を見てそれを聞いたときには耳を疑った。

テレビを付けていると新海誠監督最新作「天気の子」が宣伝されているが、まあ映画館に焦らなくても二年くらいしたらテレビでやるのかなと思う。「君の名は」の時はひとりで先に見たが、周りにどんな映画だったか聞かれても五次元とかいうと変なやつだと思われるだろうし、ちょっと変わったシナリオだけど面白かったよとだけ伝えた。

テレビで放送されたときには親父と見たのだが「話がわからなかった」と言われた。