VF2の頃はゲーマーだったわけで

 今でもゲーマーといえばゲーマーだけど、プログラム開発を覚える前の遊ぶだけの時。

 ゲーム雑誌でバーチャ2の鈴木裕さんが大会でスピーチに出された時に司会者から

 「ゲーマーのみんなは優勝者と鈴木さんの対戦を望んでいるようですが」

 「僕が出るとしたら絶対負けないプログラムを組んでそれで相手しますね。作った人にそんなに簡単に勝てるわけがないということを教えたいです」

 と答えていたんですよね。そん時はそんなのずっこいとかではなく、普通に作れるのはすごいし、自分もゲームばかりしていないで作る仕事がしたいなあ、程度に思ったものです。

 それがプログラマーとして駆け出しの頃、仕事が退屈で相変わらずゲーセンでゲームしていて、プレステばっかりしている子供にゲーセンで負けて「なんやこのサラリーマン大したことないやん」みたいに思われるのがすごく悔しかった。今でもナメられていると思う。

 ただ、100円取るために負けるという意味では、鈴木裕さんもVF2のデュラルで絶対負けないかというと、勝ち目はあるシステムだとも思うようになった。スピーチでは絶対負けないプログラムを組んで挑むと仰ったけど、実際組んだシステムであるVF2は負けるシステム。

 そこで「人間がコンピュータに負けるはずがない」と意気がる若者をプログラムで負かしてやりたいなぁ、というのがコンピュータ将棋の開発に参加する当初の目的だったと思う。

 それがゲームがどういう性質のものかと分かってくると、将棋が先手有利だとして、先手必勝のひと筋のみを指すプログラムだと、後手も先手も遊べないわけだし、負ける可能性があったとしても指し手を変えるプログラムを考えないと、ゲームとして成立しづらい。

 それは恐らくプロ棋士の方々も古来から伝わる必勝の手があるとして、毎勝負それをなぞるだけでは見世物としても成り立たないわけだし、勝負を勝負たらしめるために負けのリスクも背負って新手を探るようなことをしているのではないかとも考えるようになった。

 格闘ゲームを突き詰めるとジャンケンのような部分があるとして、コンピュータに「後出し」をさせれば絶対に勝てるか、というような命題についても考えたことはある。ストリートファイターIIターボなら、もし歩いてきて技を出したら昇竜拳、出さなかったら投げという風にすると、まあストIIターボは投げ成立がボタンを押したフレームに決まるから投げ間合いの長い方が勝つか、それともプログラムを捻じ曲げてボタンを押したフレームも返しの昇竜拳をプログラムで成立させるか。

 そう考えると、ゲームはルールとジャッジのプログラムから入って、それが完成してから対戦相手の人工知能を考えるのが良いとひとたび考えるも、では皆が納得する完全なゲームはあるのか、という問いにその考えは置きかわり、結局今あるゲームを突き詰めるか、なあなあで遊ぶかというところで年を食って妥協してゆくようになる。

 そういう妥協に対して、任天堂のスイッチのスプラトゥーン3とかは人気で妥協も感じなくてすごい仕事だなと思うけど、1、2はそう考えると進化の過程で駆逐されていっているわけで、面白いゲームを作るというテーマで真面目に仕事をしている人は自分以外に幾らでもいるわけで。

 こうして、開発から少し退いて、また遊べる立場に戻してもらえたことは幸福だと思う。


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