人生五十年、夢幻の如くなり

 NHK大河ドラマのテーマは徳川家康ですが、序盤にも出てくる織田信長になってみたいと思ったことがあります。PS2ソフトがおもちゃ屋や家電量販店ではなくコンビニで買えるという流通が実験されたころに近所のファミマで予約したのが戦国無双2Empiresです。

 まあ簡単に言って自国の領地を広げるため米を蓄え兵をそろえ他国に攻め入り自陣を守るというパソコンゲームでは一般的な陣取りゲームに3Dアクションで武将を操って敵陣の足軽や武将を切る斬る斬る!というゲームです。

 俺が小学校も子供に良い生き方としてホトトギスの句を三人の武将が読んで

 「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」 織田信長

 「鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス豊臣秀吉

 「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス徳川家康

 こう三篇並べて「殺してしまえはえぐいよねぇ」と何となく徳川幕府に取り入れんと家康の人柄の良さを刷り込もうとするわけですが、25歳くらいですかね社会に出たと言って良いのか、コンピュータ関係という当時ではちょっと特殊な職業で学校で習ってきたこととは何もかもが違う。周りと話も合わなくなり、孤独を感じた俺は部屋に籠ってひとり信長となり「切れ斬れ斬れーい!」と夢中で遊んでいたわけです。

 それから「好きな武将は?」などと会話で聞かれた時即断で「織田信長です」という俺を「怖い人」と思う人も増えて、まあ子供の頃は小太りでどんくさく中高では自転車で健脚ではあったものの腕も体もヒョロヒョロで運動はバレー、バスケ程度。

 それがいつしか「切る斬る斬る」が前面に出て、あるときちょっと仲良くなったゲーム仲間と奈良三条をぶらついた時に土産物屋に置いてある木刀を「これ買おうぜ!」と買って手に持ったまま寿司屋に入り板前さんから「剣道ですか?」と笑われながらもそのまま酒に酔って部屋に木刀を持ち帰り、部屋の中で木刀を振り回して壁を傷めたりしながらも、段々とモノを壊さないように振り回しても何も当てない木刀コントロールが出来るようになり、庭ではシャドーボクシング、ゲームは元からだけど格闘ゲームとこう武闘派になっていって、30代の終わり頃だったと思うんですけど警察沙汰まで発展するストリートファイトをしてしまったんです。

 「ゲームなんて強くったって別にケンカで強いわけちゃうやん!」とか女子に言われたりしたのを根に持っていたけど、ケンカに強いとモテるのかというと本当にケンカをして警察呼ばれる奴なんてほとんどの女子というか老若男女の一般人から引かれるわけです。

 それで最近はそんな記憶も含めて、格闘ゲームとか夢の世界なわけで、現実にはやっちゃならんことをバーチャルに楽しんでいて、その中での経験値は実生活では活かしようも無いけど、大勢でバーチャル空間にログインして大勢で夢を見るってのは架空か現実かというと客観視できる虚構というとても不思議な時代に入ってきているなと思うなどするわけです。

 小説なんかも虚構かも知れなけいけど、脚本家や映画監督に読ませると映像作品として客観視できる形になることから、それで「配役がイメージと違う」なんて批判が飛ぶことを考えると、読者ごとにイメージした映像的な配役があるわけで、それは虚構化というと客観視は難しいけど主観的には現実体験と変わらない夢のような実体が頭ン中にあるわけです。

 そうすると俺は抑えつけられた自我を爆発させえる織田信長の夢があって生きてきたんじゃないかと。曰く「人生五十年、夢幻の如くなり」で畑仕事をするではなく刀に生きて周りを意のままにする信長の生き方は結局は周囲の人間が切られんとして扱ったお接待であって、それ実は平安貴族の胡蝶の夢にも等しいものがあるんちゃうかと。

 もちろん、戦に関しては強かったんだと思います。でも何回くらい命がけで切ったろう、剣道とかどのくらいやったろう、と思うと、真剣ではなく木刀での稽古などもしたとすると、シミュレーションを重ねて数回勝って、あとは好き放題となると、現代でもそういう生き方ならあり得るんちゃうかなって、まあはた迷惑なキャラだと思うけど。


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