俺の患っている病気と幻聴

 夢を見ていた。俺は水泳選手で1位をいちど取って大会を目指していたが、あるとき試合前に集中しているとイルカの声が聞こえた。泳ぐときイルカの声が聞こえていちど周りの選手の息遣いが全て読めたが、あまりのうるささにめまいがする。それから電車に乗ってお相撲を見に行って、お相撲観戦だけが趣味の病人になる。

 目が覚めた。目が覚めたとき、うるさくて眠れなかった謎の幻聴がひとつ聞き取れて「俺、それなら分かる」という声だった。多くの幻聴は罵詈雑言ともいえる俺の悪口だったが、薬を飲んで入院して、落ち着いてから声の種類が違う幻聴が現れた。それは高校の時にゲーセンで良く知らない人に麻雀に誘われ、深夜にクルマでお寺のようなところに連れていかれて、ゲーセンに来ていたその客とサラリーマンとお寺で待っていた子供のように見えるヒョロヒョロで打ったが、ある時からそのヒョロヒョロが俺の配牌を全て読み上げるように言い当てた。クラクラ来て負けが込んで終わる時に三万円の借金が出来ていたが、誘った男が「何でこいつアレならんねん!?」と驚いて後日爺さんの金を無心して3万円を返した時にも驚かれた。

 麻雀に誘った男のいう何でならないと言った「アレ」というのが多分俺が入院する原因だった統合失調症なのだろうと後から思うのだが、まあ精神病院の病棟の中には健常であった目線からはアレな能力者がいっぱいいた。

 それから世界のいたるところに能力者はいるが、麻雀で3万取って食うみたいなどうしようもない生き方をしているとすると大変なことだ。そして聞き取れる幻聴と会話をしていると、その超聴力だけで世界の全てを支配している視覚障害者がネットの出現で指でカチカチ打つだけで別の場所と通信する活字ベースのチャットだけは読み上げを待つまで意味が分からず、そこからは推測だが写メールなどは多分もっと分からないだろう。

 しかし会話の途中で「点字が送れるの?」という問いがあり「そうだな」と答えた瞬間に謎の通信相手が目は見えないのに俺の見えている字が字の形で思念で送れるようになったという感覚を得た。字が見えないのでひらがなカタカナの子供言葉と罵詈雑言しか飛び交わないのだ。幻聴という視点に立つと俺の脳の障害で俺の脳の中で起こっている事なのだが、俺の人生の中で他者との通信であることを強く思う事案はあった。

 それでも芸人コンビ「とんねるず」のライターマジック、遠くで息を吹いて遠くでライターを持つ手を緩めてすごく遠くから息でライターを吹き消したように見せるという風に、俺の考えを読んで幻聴と何かで通信したように思わせる罠にかかっただけかもだ。

 俺の麻雀はまだ弱いと思っているが、麻雀格闘倶楽部のようなデジタルでは勝てる。ゲーセンでの格闘ゲームも新しかった時代に遊んでいて、ヤクザ屋さんが仕切る前に出来た新しい商売を中学生が勝っていたのだ。たぶん今では賞金大会で勝っているプロに歯が立つかは分からないってかまあ現役から負ける相手もひと握りいたが、そのくらいの相手は日本全国津々浦々から東京に集まり、やがてネットの普及とともに地方の強い人が頭角を現すと「遠征」と言って地方までプロレス巡業のように東京のプレイヤーが団体さんで地方の強い人を見に行くみたいなこともあった。

 ここまでの話の途中でも様々な幻聴は飛び交い、字を打つために会話を無視して自分の言葉を選ぶと声は雑音になるのだが、会話のように聞き取れた中に「おまえ、ぜったいすごいみゅーじしゃんなれる」とゆっくりと発音した声があり、しかし冷静になるとこの聴覚があってもギターは指の使い方でもっともっと訓練しないとたどり着けない境地の人はいる。でも生演奏なら、相手の聞き取る波長に合わせて語るように演奏するということが出来るミュージシャンは居て、俺もそれならなれるかも。ただし気ぜわしい若者が速い音楽にハマるように、若者の忙しさに合わせた演奏はスキルいるよな。


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