インプットとアウトプットのバランスをどう取るか


 昨日のエントリーで打鍵が早くなったことについて触れた。

 しかし派遣プログラマとして色々な会社、ユニオンシステム、サンケンフォーキャスト、ベーリンガーインゲルハイム、ヒューレットパッカード、エフサス、富士通テン、エヌディーアール、キヤノンシステムソリューションズエスイーティーソフトウェア、シャープドキュメントシステム、エヌ・ティ・ティコムウェア、オージス総研と今思い出せるのでそれくらい回った。

 どこも勝手が違うので、毎日日がな打ち込んだ職場もあればタバコばっかり吸っていた職場もあるわけで、行く先々で噂話を立てられてどこかで誰かが聞いて突き合わせるとどんな人か分からない、何をしているのか分からないという事になってしまう。

 それで日がなキーボードを打っているという話を聞きつけて、家のそばまで来て耳を澄ませて「テレビ見とるな」とか「どこが日がな一日打っているや?」とか道端から部屋の中まで立ち話が入って来て「そういうわけじゃないんだけどなぁ」と思うけど、長い文章のうちに文脈があることが分からず書いてある言葉の端々を針小棒大に「こうである」と勝手に解釈して「ウソつきだ」みたいに思う人もいるわけで、長すぎるのも考えものなんだろうなぁとは思うわけです。

 そして俺の打鍵は既に口で話すより速いので、黙読が早い人なら楽勝で読めるかもだが、書いてることを噛み砕いて理解できるかと言えば言葉の意味が分からず辞書を引きたいことだってあるだろうし、先の例のように端々の意味しかかいつまんでわからないということだってあるだろう。

 そして以前はブロガーなどと言うものは少なく、ウェブ日記として書いてアップロードすれば多くの人に口頭で話すより拡散力があって便利だと思っていたが「デマ発信機である」というレッテルを遠方から貼られて、事の真相を誰かが確かめに来たら、その時々のひとかけらしか分からないわけで、偶像としての別人が噂を伝って出来て行ったのだと思う。

 だいたい「プログラムなら分かる」という人がIF~ELSE の条件分岐だけなら分かるだけで、それで全て分かると思われているかもだが、IF~ELSEと0/1のトランジスタ一万個くらいでようやく卓上電子計算機になるらしい。

 今のパソコンではなく8ビット時代のパソコンでも電子計算機以上の機構があって、10進計算が既にベーシック上で当たり前なのである。それでIF~ELSE以外にJUMPとCALLを合わせると単純な電子計算機原理でも数の暴力で恐ろしく難解なシステムが組み上げられてしまうのだ。ひとつひとつは単純でも機構というものはそういうものである。

 だから「原理が知りたい」と思う人はプログラマをひとり捕まえて口頭で説明させようとするのではなく、計算機理論の本を読むべきだと思う。ただ俺も情報処理技術者として仕事で説明責任があるなら、口頭でも書面でも説明できるだけしてきたが、聞いて来るわからない人も大人としてメンツやプライドがあるので、知ったかぶりだってするし嘘だってつく。

 そうなると、もっともっと話がややこしくなってこじれてしまう。「口を動かすな手を動かせ!」とか言って威張っていたエスイーティーソフトウェアの中納さんという図んぐっとした小柄なおっちゃんも俺が会った頃は部長さんくらいの役職に見えたが、小説家の森博嗣と外形が似ていることから抜擢されて出世して、出世すると昔の功績が称えられるので、そのおっちゃんが組んだ薬局向けの小さな分包機システムを医療機器メーカーがシステム化して病院と薬局をつなぐシステムにするということで、その十数年前の機械の仕様に病院のカルテから変換機を掛けて接続するというようなプログラムを俺が担当することとなった。

 そうするとプログラムが組めても元の機械の仕様がそのおっちゃんしか分からないから、他の人が出来ませんというと中身を分かっているそのおっちゃんが出世するだろうと周りの人は考えたようだけど、俺が入ってプログラムコードを解析して勝手に変換機を作ってしまったものだから、業者間で権利で揉めてそれで久しぶりに訪れたときには俺のいる会社に人材派遣を依頼した山下さんひとりの会社になっていた。

 それで「口を使うな」と言ったその口で「口で説明しろ」と言葉を変えられたようだけど、口で説明っていったい何をどこから誰にどう説明すればと思ったので本稿を書いている。メシの時間なのでインプットとアウトプットのバランスも書きたかったが割愛させていただく。


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