まあマンガ「ヒカルの碁」でも語られたテーマだが

 MTGプロツアーベスト8と言っても、俺は藤田剛史さんの言いなりなところがあった。稲妻は強い。クリーチャーは2マナ以下から呼べるべきである。今なら分かることではあるが、MTGをはじめたすぐ「Benarish Hero / ベナリアの勇者」に書かれた「Banding」に興味を持ち、ウォーマンモスと白緑で団子になってグワーッと殴りかかりたいと思った。

 しかしすぐに「ウォーマンモスは4マナで1マナの稲妻に負けるからせめてアーナムジン」ということで平地にサインペンで「アーナムジン」と書かれたものに差し替えられ、それから俺はコモン箱にあるスクリプスプライトやメサペガサスなどの軽量飛行クリーチャーで殴ったら強いのではないかと組んでみると大御所の大矢さんが「大体合ってる」と言う。「じゃあミネのデッキとやってみよう」「えっ!ミネもやってんの?」俺から見てミネはネオジオ持ってるけど弱い餓狼スペシャルのテリー使いだった。

 どんどん攻める俺。

 「はい、んーじゃラスゴッ!」

 「なにそのカード?」

 「クリーチャー全部埋葬ですからー!」

 「えー!」

 「ほんでジン!」’(アーナムジン召還)

 「あー、4/5かぁ」

 「はい、ゲドン!」(ハルマゲドン詠唱)

 「土地全破壊ねー」隣で藤田さんが言う

 「なんもできん」

 「はっはっは!」

 「くそッ!ミネに負けた!」

 すぐにミネには勝ちたいと思った俺はグループでいちばん強い藤田さんに教えを請い、赤青デッキでのミラージュブロック構築を経てスタンダードでベスト8に入った。

 だけど、あの時は餓狼スペシャルで勝ってたミネに負けたことがメチャメチャ悔しかったけど、他のゲームで先からやっていて当たり前ってことが飲み込めなかった。そしてミネを含めマルゲ屋メンツは仲が良くて皆でMTGを遊んで飽きていて、店をしている大矢さんとすることのない藤田さんがしぶとくMTGを続け、商売にしようとお客さんを探していたところに見事に捕まってしまったのだ。

 それで俺はアラーラの断片の頃から「あのバントの弱い人」と若ゲーマー、それはもう小学校高学年から中高生くらいにもレアカードをいっぱい持ったお金持ちの強い子がいっぱいいる中でなけなしのカードで負けながらゲームを続けている。

 ヒカルの碁のネタバレを若干含むが、憑依した佐為の言いなりに指すと勝てるヒカルがある日言いなりに差して勝つ生活に嫌気がさし「自分の手で指してみたい」と憑依した佐為に反発して、その結果として負けてしまい、日本チームは韓国チームに敗れてマンガの連載は終わってしまう。

 あの頃から比べると俺はコンピュータ将棋の研究もしてみたが、コンピュータの将棋も思考ロジックを考えるパートと、持ち時間の少ない対局を勝つためにメモリをいっぱいになるほど定跡を積んで、思考する前に同局面認識で決まった1手を返すプログラムと思考部が連携している。考えるっちゃどういうことかという事を考える研究部もあるが、それは昔に偉い人が作ったものをそのまま使い、定跡研究というか将棋で勝つための研究に入っている人もいるように見える。

 それで結局コンピュータがプロ棋士を負かしたとして、その通りに指したら人間相手同士でも勝てるとして、しかし人はなぜ将棋を指すかと言うとプロになって賞金を得るためにってのは副次的な産物であって、いや経済社会でカネは第一義だろうと思われる諸氏もおられるかとは思うが、カネと暇を余して楽しみのためがゲームの第一義であると俺は思っていて、カネのある貴族がゲームにカネを落とすから市民にも盗賊からプロ棋士に成り上がる道が用意されているのではないだろうか。

 ただ、世襲で歴史を重んじる貴族政治の中心で子役として育った俺が英語のかるたで宮家である以上の市民人気を新しいゲームというもので得て出世するというのが周囲の貴族同士で全く面白くない話であり、だからしてそんなものは流行らせないという圧が周囲に働いて、遊戯王の登場や子供向けへの刷新が行われ、奈良三条からも店が無くなってしまった。近所のキューピー堂にももう人は来ない。

 子役はそれはそれでストレスがたまり、大して取沙汰されないゲームの世界だからストIIやMTGが俺の勝負の場であり自己実現の手段であったが、人気が出て人が多くなったから勝てないという数の論理ではなく、人気が出てステータスになると位を上げるのにそれなりに設備などのカネがかかるようになり、カネで買えるステータスなら権力欲があるほうが操作対象にしていくのも必定だとは思う。

 そこでステータスを買うカネを惜しんで商売をしていく道を選んでいる時点で、位が低いことに甘んじるのは仕方のないことだとも諦めている。

 佐為の言いなりになると勝者ならそれはそれで滅私奉公なわけで貴族政治になる。


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