家のそばにガス管工事が来て、そこを選挙のクルマがうるさく通っていくわけだが、この時期にしか来ない工事のオッサンたちが俺の部屋に聞こえるように「ここいつ来てもヤニ吸っているかテレビ見てるかやで」みたいな話をしている。
親父が政治家とつながっていて仕事は建前でしているけど実質大家さん。金持ちの息子がパソコンで遊んでいるのは分かっても、コンピュータソフトの設計者とか偉い資格を持っているというのは信じられておらず、身分が高いからヨイショとそういうことに持ち上げられているだけだろうというのが奥村組のあんちゃんらの見方なのだ。
まあ、親が政治家とつながっていて家に権力があって、ロマサガのアルベルトみたいに近所の洞窟に行くのでも強い戦士がふたりついてボスを倒すには薬草くらいしか仕事の無いヤツ、みたいな目で俺のことを見ている人もいると思う。
それでも俺はゲーム会社で仕事をしたいってか、最新のゲーム機のプログラムの設計がどういう風になっているかプログラムならソースコードを読みたいし、ツールソフトで作られるものならそのツールソフトのプログラムをやっぱり仕組みが知りたいわけで。
ただどうしても親が政治家というのは付きまとって、パソコンゲームの仕事とか小さい仕事に入れたのは自分の力もあると思うけど、役所とかインフラ系の管理部門でパソコンを使っているところを見学させてもらって、そういう所の人はああいう所の偉い人は名前貸すだけでハンコ押してお金が入ってきて、あとは下の人がヨイショと持ち上げているものなんですよと世の中の仕組みを俺に教えようとする。
それでも、俺は最新ゲーム機の開発現場を知りたくて、それは企業秘密ということになっていて、政治家の息子で資格を持っていると言っても企業は企業で政治より大きな金を持っている大企業が大規模ゲーム開発をしているので、権力があることを息子に教えようとしてもこの息子が大企業のゲームのとりこで、それは商品になる頃には小遣いで買える額にはなるのだが、工程とか内部仕様みたいなものはサッパリ分からない。
最近、プログラマーとしてスキルアップして見込み年収が上がった求人を見たら、それを出している会社をヤフーファイナンスで株の相場と見比べて、いくら出しているところが株が幾らで上がるか下がるかという付き合わせを始めた。ゲーム系上場企業の平均年収より自分への求人年収のほうが大きかったりして、ゲーム系では３５歳定年説で自分がその歳の時に大企業の下請けの開発部の椅子に座らせてもらえたが、その時はスーファミの売れ筋ソフトをスマートホンでタップで遊べるようにする仕事で、スーファミからゲームボーイアドバンスになってスマホになる時に全部Ｃ言語で書かれたコードを専用のコンパイラに渡してちょっと手直しするという工程だった。それでも地獄の納期なのだが、売れ筋は検品評価に年数をかけるために、納期を落としても問題なかった。
だからして俺はＣ言語なり今時のPythonとかかもだが、プログラムがあってそれを内部で改定していって、何年もかけて作り足している開発部があって、そこにしか無いものを知りたいと思ううちに、映像も音楽も全部へりくだって俺好みに意のままになったテレビを見るようになっているんだけど、チュンソフトの開発部と任天堂の本社にはまだ立ち入ったことが無い。俺がシャープの奈良工場で働いた後に親父と政治家のご一行で亀山工場の見学会があったらしく「すごかった」という話を聞いたことがあって「ゲームもあなたがその歳になったら見せてもらえるかも」という話も聞いた。
まあ、頑張らなくても生きていればそういう歳になって良いことあるかもと思って生きていくこととした。
