ヤンキー新語「イキってる」

 世の中上手くは行かないものである。贅沢をたしなめるために質素倹約を説くものがいる一方で、スーパーに行ってカゴを持ち昼飯二人分シャケ弁ふたつと朝食用のバターロールをカゴに入れた。シャケ弁は前までちくわの磯部揚げが入っていたが半分に切ったコロッケに変わり、容器が少し変わって白米の量が変わり値段が20円上がっていた。

 「ケチよねぇ」どこかで婆さんが噂話をしているが、無視して買い物を済ませた。

 あるところでは質素倹約であるものが商店からするとケチ。町人文化について詳しい本はあまり読んだことは無いが、好色一代男なんかを見ると町の色気に対してそんなに好色だと子供や家庭を持てず一代で終わりますよと脅している文言で、それは某ウェブライターがエロ本での自慰を推奨して自分はライターの給料をもらて実生活は色めき三昧であるのか、それとも正直な筆を執って乱筆ではあるが貞操を保っているのか、結局は科学的根拠のように誰がやっても結果が同じになる以上の読書はかつては知識階級と庶民の差にはなったかもだが、義務教育や活版印刷による庶民への本の普及以来、処世術のようなものは時々で裏返り、筆者と読者での心理戦を展開するのが新聞や週刊誌の慣習ではあるが、単に俺の場合は古い本を読んでいるので時代にそぐわないのだと思ったなどした。

 まあ、質素倹約というと白米だけでもご馳走でメシに味噌汁と沢庵があればという感じであって、シャケ弁にロールパンなんてシャケにバターが入っていてそれでも栄養十分なのではあるが、そういう風に費用対効果というか「お買い得」を意識して買い物するからケチンボなのであって、スーパーでお新香や沢庵を買うことがもしかしたら現代の「粋」ではないかと考えてみた。

 町人文化では傾奇者のような「粋」の気質が重んじられると読んだことはあるが、分からない者には粋は時に奇怪な行動として観察される。

 俺は小学校くらいでかなり読書をしたので子供ながらに粋という言葉は知っていた。そして自身の奇行に対して周囲が批判を浴びせたら「粋ってもんだろ」と言い返したものである。

 この頃からヤンキーに目を付けられ「なにイキッとんねん!?」と迫られる。

 この時に俺の解釈は原付に跨った金髪の切れ目の兄ちゃんが俺に注意してきたことは「意気がっている」で「意気ってる」だと思い、謙虚に勤めるようにしたものだ。

 しかし良く考えると、あの頃から既に町人が使う以外の言葉を読書でたくさん覚えたので、テレビでも教科書でも見たことのない言葉を口から発する以上は他者に理解できる者がおらず「粋ってもん」は「いきってもん」のまま「イキッてる」というヤンキー新語になったのであろうと推察される。

 まあ、次はそろそろスーパーの買い物でもイキッてみないとと思うのであった。


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