どこまで本当なんだろうね将棋の本って

 コンピュータ将棋の開発者ではありながら、下手の横好き将棋は二の次で生きてきました。人生で読んだ将棋の本は二冊ですが、小学校の時に読んだ入門書はクタクタで大人になって何となく手に取った雑誌将棋世界をペラペラとめくって読んでいました。

 将棋の先手必勝(先手勝率7割)の知らせが来ていますが、はじめての入門書で相掛かりについて素直に読むと「後手よし」になる棋譜が載っていました。それで先手必勝だという小学生に後手番を取るからとその棋譜を試し、勝ったことを覚えています。

 しかしその後「もっと強いやつが居る」と戦わされて敗れ、その時は何となくで棋譜を覚えているでもなく、親もその事件は知らないものの将棋の本を夢中で読んでいるとファミコンの「本将棋」を与えられ、攻略本雑誌の棋譜を見てその通り勝つと次に森田将棋というのが出て、お座敷でそれでずっと研究というかね、していたと思います。

 ただまあ、将棋ソフトの不思議なところというと思考部でしたので、思考ロジックは組んだのですが、あまり興味の無かった定跡部を作ったら、作者としての責任から定跡研究は最低限しておこうと没頭して、ふと小学館の入門書の最初の棋譜のページが何処だったか気になって探して、その定跡ばかり研究しだしたのです。

 あるとき、電話で東京の古い友達に「将棋は先手必勝らしいけどねぇ、小学校の入門書に後手勝ちの棋譜が載ってんだよぉ。アレには騙されたよね、子供だましにかかったんだと思う」って電話したことがあって、その言葉の責任も同時に考えていたんですよね。

 それでひと晩明けて、棋譜におかしいところは無いか調べだして、どうして騙されたかと問うと、変化のうちのひとつを考え無しに読み飛ばしており、そこを変えれば先手必勝になるのではないかという所で朝目覚めたわけですが、試すのにコンピュータを起動してその頃には本を書いたのが加藤一二三さんで「アイツに騙されたのか?」と著者欄を見ると違って、写真が載っている棋士先生のせいにして好きにモノを書いているゲーメストの石井ぜんじ攻略みたいな子供だましの物書きがいたものだと沸々と怒りに近い感情がわいていたのです。

 まあ、並べてみて、そりゃ俺がバカなのか将棋指しが全員バカなのか、いやそれでも将棋指しって世の中では賢いと言われていて、その賢さは将棋の強さなのか、棋界という結界に守られて大衆を百年騙したのか、騙された大衆がバカなのか、このだんだん分からなくなってくるところが将棋が人を飲むところであり、定跡をひとつあらためたとして、それで良しとなっているのかもういちど分からなくなったのが写真の棋譜です。

 ただね、こう進めると見ていて面白い将棋では無いかなぁとは思います。展開がいつもこれでは見世物としては飽きるから、それに関してはプロはプロとして盤の上で芝居は打っているとは思うんです。

 その中で入門書から雑誌まで誰が何を書いていてこんなに多くの人が騙されているのかというと、騙そうとしているわけではなく将棋は難しく多くの人が真面目に取り組んで負けているということを正転させれば、将棋ってまだまだ奥深くて面白いのよねと。


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