思い出はいつの日も雨

 台所でタバコを吸っていると

 不意にサザンのTSUNAMIが胸に響いた

 I'm getting blue

 レイニーブルー

 七月の雨なら

 五月雨よ

 なんで?

 思い出はいつの日も雨

 心の深くに潜っていく

 見つめ合うと素直におしゃべりできない

 津波のような侘しさにI know怯えてる

 何が怖いの?

 そう、心の奥に閉じ込めていた

 ひどい失恋をもっと考えてみた

 出会いも別れも街中

 相手は賃貸マンション住まい

 恐らく偽名

 分かるのはメアドとケータイ番号で

 本当に消えるように

 会えなくなってしまった

 着信拒否が別れの意思表示で

 自分で何がダメだったか

 自分に原因があってあらためれば

 また再会があるように考えてた

 しかし俺が歳を取って

 相手は年上だったことも考えると

 結婚しても子供はもう無理だよな

 と思うようになってから

 子供を生める若い女性を好きにならなきゃとか

 再会してももう結婚はないよなとか

 そんな風に理屈で感情を抑えてやり過ごしてきた

 多分遊女だったんだろうとは納得していて

 カネが無くて甘えてくる年下の男である俺に

 経済的な力は見込めなかっただろうし

 若くてかっこいい男は他にも周りにいたし

 だいたい俺はぽっと惚れちゃったけど

 相手にしたら面倒な男に絡まれた?

 でも車の助手席に乗る?

 んー、何もなかったとも考えられないが

 反対に相手に何かがあったのかもだが

 すべて

 今となっては

 あらためて諦めることをしないと

 あのときのまま仕舞ってた気持ちがあったんだ

 考えたらウチの母親だって

 カネ持って家を出て

 気が付いたらマンションで他の男と同居してた

 過去は隠しているみたいで

 母親がどういう事情を背負っているか

 嘘で塗り固めた別世界を生きていて

 俺が久しぶりに会いに行っても

 周りにどういう芝居を打っているか

 何も分からず面倒だから

 俺も会わないという選択をした

 その辺はド田舎で住所がハッキリしてて

 家と家の付き合いとしての結婚があって

 そうではないロマンティックラブ

 つまり小説的恋愛結婚の時代に

 自分が小説の世界に入る前の

 現実の設定が面倒くさいというのが都会人で

 東京の恋愛は田舎から電話がかかってくると

 それでも続くなら結婚もあるのかもだが

 興醒めになる人だって幾らでもいるだろう

 まあ恋愛ってダメージ受けることあるから

 古傷にちゃんと手当てしてあげれてないと

 怖いって気持ちが勝って来たんだと思う

 表通りには花も無い癖に棘が多いから

 油断してると刺さるや

 ズタボロです

 表通りから壁一枚に住んでいるものでして

 まっさらに生まれ変わって

 人生イチからやり直そうが

 首の皮一枚つながった

 ギリギリの今を生きてるんだ

 全部捨てたつもりでも

 忘れられない過去がある

 忘れたつもりでも

 体のどっかは覚えてる

 それが

 本当に言葉が出ない原因だろうか

 そこは

 ちょっと違うかもしれないなとも思う

 過ぎてく時には鈍感な君へ

 好きなのに泣いたのは何故?

 この部分が次の問いだな

 俺も過去を捨てて良い男を演じきって

 女の子ひとり騙しかけたことはあるが

 いざ結婚となると

 アレ?

 この今のシチュエーションって

 リアル?

 不思議な気持ちで我に返って

 またペラペラと言葉を並べて

 結局別れた

 それから背負っている現実とか

 貯めているカネがあったら

 結婚は出来るかなと思ったが

 生活は生活で

 恋愛は恋愛で

 生活の延長に出会いがあって恋愛する

 そう思っていたら出会いなんて無いかも

 そんな気がしている

 だから恋愛のために生活圏を離れるとすると

 やっぱり居所のハッキリしない遊女に出くわす

 地に足の着いた生活をしている

 生活圏の女子高生とか働く女性

 そこと接点なんてある?

 ないよね

 俺の自意識は東京でない田舎もんだけど

 奈良も古都で

 都に近いこの町じゃ

 買い物の釣銭渡す用事以外に会話など無い

 それでも、雨の思い出からは一歩進んだか

 結婚も建設的に準備から考えたいが

 そもそもそこまで好きな人がいるか問題

 もう10年以上病院に通っていて

 若かった医療事務や薬局の女性も

 一緒に年を取った

 相手の気持ちも大事だが

 ときめく気持ちは無くなったし

 スーパーのレジ打ちのおばちゃんたちが

 色めき立っている時もあったが

 そんなところに恋愛はあるわけなよね

 多分みんな既婚者だろうし

 パートタイマーなので別生活もあるだろう

 用事以外の会話が発生しない街のシステム

 その遮断機能が「買う」という用事を作る

 いちどは引っ越さないと結婚は無いかもな

 姉の結婚も周囲から色々と言われたが

 お互いレンタルビデオのバイト店員だった

 とかだったようなことを思い出す

 ゲーセンバイトした時二階のカラオケに

 女の子がふたりいて一緒にメシ食ったっけ

 そうよね、そういう風にバイトを出会いにすると

 労働者不足と結婚率の問題を同時に解決するわけで

 俺がそんな事のためにバイトに出るのか?思うよ

 まあ学校行ってる子にはこの停滞感は分かりづらい

 ただ、俺がアクションを起こしていないのが原因か

 それとも交際を売り物にするための社会機能のせいか


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